散日拾遺

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不思議に誰も言わないこと二題

2015-09-04 07:16:06 | 日記

2015年9月4日(金)

 マイナンバー(社会保障・税番号)法と個人情報保護法改正法が、昨日の衆院本会議で可決成立した。安保法制騒ぎに大方の注意が集中する中で、スルリと通過しちゃった印象があるけれど、良いのかしらん?

 先日来、この話題が出る度に頭に浮かんでいたのが「国民総背番号制」という言葉である。70年代から80年代にかけてマイナンバーと同様の方式が提案された時、批判的に揶揄する立場から使われた言葉で、これに反対する人々のキーワードになっていたと記憶するが、今度は不思議に誰も言わない。昭和の素材はカビが生えちゃってますか?

 あの当時と今と何が違うかと言えば、コンピューターやインターネットなど情報技術の水準が決定的に違う。パソコンが登場し始めたのが80年代で、携帯電話もインターネットも存在しなかった太古の昔だ。その後のIT革命の中で、情報を一元管理する技術的な基盤が確立されたばかりか、事実上あらゆる情報が筒抜けになり「誰かに知られている」状況が恒常化した。それを社会保障や税制に活用するかしないかの違いだけだというわけで、今さら「国民総背番号制」なんどというレトロな看板を持ち出しても仕方がないと、僕ら昭和人からしてシラケかえっている。

 しかし、「今さら」とか「~だけ」とかいう退嬰的なフレーズが、どうも気に入らないんだね。狙いや危険はいつだって同じなんだから。僕と同学年で社会的に活躍中の医療関係者に、「これをさらに拡大応用すれば、健康管理情報を生活習慣病予防に活用することができる」と大喜びしている御仁もあるが、同じ世代の同業者でもこれだけ感じ方が違うものかと思う。余計なお世話だし、イヤなものはイヤなのだ。座頭市じゃないが、イヤな渡世だなぁ・・・

 

 誰も言わないと言えば、橋下氏である。大阪都構想を住民投票にかけて惜敗したとき、「政治家を辞める」とキッパリ言ったのではなかったかしらん?僕の記憶違いかな。あの時はちょっと見直す感じがあった。この人がこのタレントを政治以外に使うとしたら、どんな可能性があるだろうといくらか楽しみだったりして。

 創立者のくせに党を割るのがけしからんとか、政権党との野合がどうしたとか、そんなことは政治家なら想定の内だろうけれど、あれほどハッキリ明言し、「そうまでせずとも」といった感じの質問にも「いや辞める」「辞める、辞める」と言い続けていた人が、その件の釈明なんにもなし、周囲も誰も突っ込まないって、これはまるで理解できない。ほとんど不条理、カフカの世界だ。

 「不条理に耐える力」が大事なのでした。「桃太郎より浦島太郎」、ココミンさん、そうだよね?日本の政治は、僕らの不条理耐性をとことん鍛え養ってくれる。