明日の水曜日は寿司で5時まで働いた後
その足でイリノイの借家に帰る事にしたので
火曜日の夕方 山口さんを訪問した。
ベッドに横になられた山口さんを覗き込むと
すっかり頬がこけ 肌も灰色がかっておられ
一瞬息が詰まりそうだった。
弦の上に片手を置くと指先を動かされはするけれど
先週に比べ反応は弱々しい。
そうしてそのうち眠られてしまった。
眠られている山口さんのベッドサイドで
リベリーハープを奏でていると
テーブルの上に置かれてあった1冊の本が目に留まった。
茶色の紙でブックカバーがしっかりとされており
余計興味を持った私が中を開くと
小学館の学習雑誌 ”小学2年生”だった。
山口さんが養子としてアメリカに渡ったのは
彼が小学2年生の時だったのかも知れない。
謎を解いていくような思いで雑誌をめくった。
1ページ目に載っていた詩 ”たかいてっきょう” にある
トンネルをでると の で と
それに続く たかいてっきょう の て が丸で囲まれており
て と で を間違って読んでしまう少年山口さんと
その指導をされていた施設の方を感じ きゅっとなった。
そうして1955年に発行されたこの雑誌が今も綺麗なまま残っている事に
山口さんを養子に迎えられたアメリカのご両親の深い愛も感じた。
山口さんが今、日本語を話されないのは
多分 アルツハイマーを病んでおられるからで
それまでは簡単な日本語なら理解されていたように思う。
日本の童謡を聴く度に毎回
”Oh"と声を出され
深い感動でもされたような表情になられるのは
記憶の奥に眠ったその歌が
日本で歌ったその時と一緒に蘇って来るからかも知れない。
今度訪問する時はハープを奏でるだけでなく
YouTubeで日本の童謡も流そう。