山口さんのベッドサイドに座って日本の唱歌を流していると
ホスピスで音楽療法士をしておられる方が楽器を持って入って来られた。
この日は夕方の5時半までボランティアの人の名で埋まっていたので
5時半に戻って来ることにし
2時半に来られたその音楽療法士とバトンタッチした私は
軽食をとりに外に出る事にした。
ご家族のいない山口さんの遺灰の行先が気になっていた私は
それを訊きに老人ホームで役職をされている方の部屋に入った。
まるで家族のいない患者さんは山口さんが初めてでもあるかのように
”そうね どうなるか わからないわ。” と言われる
”でも火葬はされるんですよね。” と訊いた私に
”ええ まあ” と力ない応えが返って来る。
山口さんの持ち物は多分 全て
ゴミと一緒に捨てられるんだろう と思った私は
額に入った山口さんの写真が頂けるか 訊き
軽く頷いた彼女に
”忘れないでくださいね。” と言って部屋を出た。
軽食を終え車に戻ろうとした時
最期を看取るプログラムの責任者であるジュディーさんから
”患者さんが亡くなられた為 キャンセルされました。” と
電子メールが届いた。
悲しみはなかった。
死期をすぐそこにされていた山口さんが
身体的な苦しみから解かれた事に安心する想いが大きかった。