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MFCオーナーのブログ

ブギウギ列車夜行便

2024年08月12日 09時48分34秒 | 音楽ネタ
ご存知の方も多いと思うが、こんなショッキングなニュースが流れた。


あのエアロスミスが、スティーブン・タイラーの声帯損傷が回復しないので、ツアーからの引退を決定した、というニュースである。このニュース、結構各方面に衝撃を与えたらしく、"同世代"のブライアン・メイも「悲痛だ」と涙の声明を発表したそうだし、FMでもこの話題を取り上げていて、DJは残念とかショックとかコメントしながら「エンジェル」をかけていた。

このニュースで驚いたのは、スティーブン・タイラーは76歳になってて、それでもツアーに出ようとしていたこと。確かに、大先輩のストーンズや"同世代"(笑)のクイーンあたりが未だにワールド・ツアーとかやってるので、エアロもまだ現役だしツアーは当然という気がしないでもないが、それにしても、この年でツアーというのには頭が下がる。いやほんと、もうゆっくりしてて下さいよ。その心意気だけで十分です。

で、エアロである。いや、今回のニュースに触発された訳ではなくて、ちょっと前に妻が突然エアロ聴きたいと言うので、車でエアロの90年代のアルバムとか聴いてたのだが、そう言えば70年代のアルバムでも持ってないのあるなぁ、と思って中古で探したりしてたのだ。

という訳で、最近買ったCDから。




ご存知エアロの2ndである。1974年発表。邦題は『飛べ!エアロスミス』。確か、本作でエアロは日本デビューを飾ったはずで、若手の有望株だったエアロを日本でも大々的にプッシュしよう、という意気込みが表われた邦題と言っていいのかもしれないが(笑)、当時の日本側の担当者は、バンド名とロゴとアルバム・タイトルから、"飛行機"や"翼"をイメージしたらしく、タイトルはもろそれだし(笑)、一曲目の「Same Old Song And Dance」は「エアロスミス離陸のテーマ」という邦題だった(笑) 本作と次作は全曲邦題がついてて、どういう方向に持って行こうとしていたのかは不明で、プロモートしやすくしようという意図は、なんとなく分かるが、なかなかにトホホな邦題もあり(笑)、本作収録曲だと、有名なヤードバーズのカバー「Train Kept A Rollin'」が「ブギウギ列車夜行便」という邦題で、これは僕にとっては歴代迷(名)邦題TOP10に入る傑作と思うが(笑)、今回購入したCDでは、この「Train Kept A Rollin'」と先の「Same Old Song And Dance」については、邦題はなくなっている。なんか残念(爆)

という訳で、エアロの2ndである。いや、なんというか、後にエアロが成功したから言うのではないが、2ndの割にはすでに大物の片鱗があちこちに感じ取れる傑作、と言っていいのではなかろうか。1stと比べると、曲作りも洗練され、80~90年代のようなキャッチーさはないけれど、独自の個性は確立されており、加えて風格すら感じさせる。カッコいいリフのハードロック「エアロスミスSOS」、ドラマティックに展開する「折れた翼」、曲が足りず穴埋めの一曲だったとは思えない「支配者の女」など、聴きごたえのある曲がも多い。エアロの場合、ヤードバーズをカバーしている事からも察せられるが、同じブルース・ロックでもイギリスのバンドからの影響が大きいようで、そこが同時期のアメリカン・バンドと一味違うところであるが、本作もブリティッシュな雰囲気の陰影を感じさせる音作りで、実に素晴らしい。イギリスのバンドと勘違いした人もいたかも(笑) 初めて組んだジャック・ダグラスの功績もあり、以降、エアロはダグラスとのタッグで名作を連発し、70年代の第一黄金期に突入していくのである。

続いては、




ま、文字通り、エアロのグレイテスト・ヒッツであり、ご存知の通り、エアロのベスト盤は何種類か出ていて、それらの収録曲の大半が80年代後半以降の、いわゆる復活後の第二黄金期のヒット曲で、70年代のベスト盤は本作だけである。故に貴重なのかどうなのか(苦笑) このベスト盤、1980年頃に初期バージョンが出て、その時は「ドリーム・オン」「セイム・オールド・ソング・アンド・ダンス」「スイート・エモーション」「ウォーク・ディス・ウェイ」「ラスト・チャイルド」「バック・イン・ザ・サドル」「ドロー・ザ・ライン」「キングス・アンド・クイーンズ」「カム・トゥゲザー」「リメンバー」の10曲入りだったのだが、いつの間にか、タイトルに"1973-1988"が追記された新バージョンが出ていた。今回僕が中古で買ったのも、その新バージョン。シングル曲のみだった初期バージョンに、1stから3rdから一曲づつ及びジョーとブラッドのギタリスト2人が脱退していた時期の曲も加え、さらにボーナス・トラックも追加されている。前述したが、エアロの70年代(正確にはコロンビア在籍時)だけの編集盤は、本作と3枚組の『パンドラの箱』くらいしかなく、やっぱりエアロは70年代のほうが好きな僕からすると、この時期の曲をまとめて聴けるのは有難い。

エアロというと、ワイルドなイメージが強いと思うが、実際には2ndや3rdで顕著な、陰影のある作り込まれた音作りが特徴で、ワイルドなのは『ロックス』と『ドロー・ザ・ライン』くらいなのでは、という気もする。ここで告白すると、えらそーな事言ってるけど、実は『ドロー・ザ・ライン』の次すなわち『ナイト・イン・ザ・ラッツ』『美獣乱舞』あたりは聴いてないのだが(激汗)、編集盤で聴く限り、決して悪くないな、とは思う。成功はしたものの、それによるプレッシャーなのかどうか、メンバーはアルコールとドラッグに溺れ、レコーディングもままならず、人間関係も最悪、という状況だったと言われている70年代のエアロだが、それでもクォリティの高い作品を出していたのは凄い。確かに、復活後のエアロと比べると、ややキャッチーさには欠けるけど、その分かりやすいけどちょっと武骨なとこも、この頃のエアロの持ち味でもある。「スイート・エモーション」とか、復活して以降の曲だったら、ちょっとブリッジとか足して、さらに魅力的な曲に仕上げたのだろうな、とは思うけどね(笑)

という訳で、70年代のエアロがやっぱり好きです(笑)

でも、冒頭のニュースにしてもそうだけど、やはりエアロ=スティーブン・タイラーなんだなぁ、と改めて思う。ずっとバンドのリーダーで、初期は音楽性も含めてバンドを牽引し、成功してからドラッグ漬けになったバンドの立て直しに尽力し、主要メンバーがいなくなってもバンドを維持し復活に導き、復活後は外部ソングライターの導入などのイメージ戦略を展開して、昔からのエアロのイメージを損なう事なく、キャッチーで洗練された曲を発表してファン層(購買層)を拡大し、エアロを全米ナンバーワン・バンドのひとつにまで押し上げた。素晴らしい功績である。メンバーにも彼に逆らう者はいないだろう。ま、ツアー引退し仕方ないけど、まだ新曲作ってレコーディングする意志があるのなら、是非頑張って欲しいと思う。ま、エアロを聴き始めた事は、エアロ(=スティーブン・タイラー)がこんなに超ビッグな存在になるなんて予想もしなかったけど(笑)

ほんと、クイーン・キッス・エアロスミス世代としては(笑)、いつまでも頑張って欲しい、と思うのであります^^
コメント
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