Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 155

2020-02-11 11:17:52 | 日記

 私が外出から帰って来た時、その直後に出会った祖母の言葉だ。すると私の心には彼女に裏切られたという様な腹立たしい気持がふつふつと湧いて来た。そしてその後、私の瞼に縁側での母との遣り取りや、母と私の場面場面の様子が浮かんで来た。糠袋の動く様、その袋が取り除かれた床に、ささくれ立つ床材の目、複数の棘の様に立ち上がった鋭い針先。

「どこがよく出来ているのだ。」

ぽんと私の口から言葉が飛び出した。

 私はしまったという感じで思わず父の方を見る。そこには全く動じない父の寝姿が有った。ほっと安堵の溜息を洩らす私。私は依然として静寂な儘である寝室内に安心した。

 その後も私は今日の出来事を思い出す度にムラムラと怒りが湧いて来るのだった。祖母の馬鹿、母の馬鹿、皆大嫌い、等々。何時しか天井の木目に向かって、私は盛んに叫んでいるのだった。この頃になると、私の中にはここで何をしても父が起きないという確信めいた物や、誰からも咎められないという様な安心感が存在していた。

 『さて、これで起きない父の方も妙だ。この家は妙な物ばかりだ。』

腹立たしくなった私は寝ころんだまま父の横顔に自分の面を向けた。

「お父さんの馬鹿。」

こう普通の声で罵声を掛けてみた。やはり思いの外父の顔には変化が無い。そこでバカバカバカバカ…、調子に乗った私は馬鹿の言葉の繰り返しである。この世の私の全ての物事の不満は父から出ていると言わんばかりの気持ちがこの時の私には募って来ていた。私は自分の不満を言葉という形にすると、こうやって父の寝顔に向けてぶちまけたのだ。

 ふと気づくと、横を向いた私の目に、父のいない布団の枕が映った。おやっ、父は何処へ?と思って父の布団の上の方を覗いて見る。布団はその儘捲り上げられていないのだが、中に父の姿は無かった。何時の間に起きたのだろうと私は思った。


うの華 154

2020-02-11 10:13:37 | 日記

 私は何となく父に何の変化も無いという事が返って妙に思われたりした。が、先程母が私の子供布団を敷いてくれた時言っていた小言の中に、父を起こすなとか、父を静かに寝かして置くようにという注意の言葉が入っていた事を思い出すと、この考えを直ぐに思い返した、父を起こさないで済んだ事の方を喜んだのだ。

 私が改めて父の寝姿を見詰め直してみると、この時になってもそうだが、父の寝顔も布団に埋もれている彼の体も、微動だにぜずに静止した儘だった。本当に全く何の動く気配も無かった。ぴたりとその体が置かれた空間、その定位置に収まっているのだ。不思議な物だなぁと私は思った。

 今迄見てきた父の寝姿は、布団が崩れて片手が出ていたり、足が出ていたり、体の向きにしても頭の向きにしても、決して全体がこの様に上向きの儘とは限らなかった。所謂寝乱れしている場合の方が多かったのだ。この様に体も布団もきちんと整理整頓された様な寝姿は、見ている私に取って、返って堅苦しく息苦しくさえ感じられた。それでやはり私は、一番目に付く彼の鼻の頭を触ってみようかと再度思い立った、

 私はそっと半身を起こした。そうっと、そうっと、心の中で呟きながら私は注意して手を伸ばして行った。私の小さな手がやっと父の顔まで来た。息を詰めていた私はもう少しだと目を輝かせた。と、父が突然ふうっと口から息を漏らした。驚いた私は身を固くして思わず父の顔に掛かっていた手を引っ込めた。

 そこで私は父の寝顔を窺っていたが、今まで2度の試みが失敗に終わったので気が削がれた。それ以上父の鼻にトライする事を止めると自分の手を引っ込めた。目的が達成できなかった私のむしゃくしゃする不満の気持ちは、私のすぐ目の前に映った父の掛け布団に向けられた。私はその布団の縁を少々掴むと、手で持ち上げパタパタと少しだけ煽ってみた。次に父の布団から目を離して彼の寝顔に目を向けたが、やはり顔に変化はなかった。彼はすました顔で目と口を閉じていた。

 寝かして置こう、その方がいいな、父はこれだけ構っても起きない程に眠たいのだと、私は思った。それで私も父同様ぐっすりと昼寝をしようと考え、今度は本格的に寝付く努力に入る事にした。

 私は布団に収まり、一心に眠りに落ち込もうと努力したが、そうすればするほど私の目は冴えて来る。あちらへ寝返り、こちらへ寝返り、バタバタやっていたが、出てくるのは溜息ばかりだ。これではいけない、動くから眠れないのだと私は思った。私は熟睡している父に習って、きちんと上を向いた姿勢になると集中して天上の木目を眺めだした。

 薄茶色の明るい素地に自然な色合いで茶色や焦げ茶色の流線型の模様が流れている。私はこの流れ具合から小川等の水の流れを連想した。石に割かれる水の流れ、さらさらと隆々と、時に音も無く盛り上がり滔々と流れる透明な水の様が脳裏に浮かんだ。その水の有り様は母の故郷のものだ。母の郷里の家の風景や母方の親類の顔が浮かんでは消える。すると次に、私の思考は母の郷里から離れ、こちらの家や父の両親である祖父母の顔へと移って来た。2人の顔が私の瞼に浮かぶ。その浮かぶ顔は特に祖母の顔だ。そしてそれは今日の祖母の顔になり、家での場面になり、彼女の発した言葉として私の脳裏に甦って来た。


今日の思い出を振り返って見る

2020-02-11 10:08:25 | 日記
 
ダンスは愉し 16

 みどりさんに気付いた彼女は、ふいと踊りを止めると、恍惚とした感じで動きの無い表情のままフラフラとこちらへ歩み寄って来ました。その足つきがもう心もとなく、どうにも足元がおぼつかない......
 

 良いお天気の祝日。建国記念の日です。昨日買って来たハイチュウを食べています。昔はよく食べましたが、今頃になると、本当に久しぶりです。