Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 161

2020-02-17 09:39:39 | 日記

 私はその時抱いた歓喜の気持ちの儘、その儘に階上にいた祖母達を迎え入れる事を決意した。私は笑顔を崩さなかった。寧ろ今迄以上に気持ちを込めて、より笑顔に力を入れると歓迎の気持ちを表現した。

 そんな私の目に、不思議な事に祖母は明らかに元気を失った。先刻私が目にした様な塞ぎ込んだ姿、彼女の齢を感じる寡黙な姿へと変わって行った。彼女は肩を落とし、項垂れると、私を避ける様に私から彼女の身を逸らせた。

 私がそんな祖母に、どう対処したらよいかと決めかねていると、階上からは残っていた人物達が降りて来た。私の母は勿論だったが、その人物達が私の目の前に降り立ってみると、そこには2人の婦人が並び立っていた。それは私の母と伯母である。

 『あれっ?、伯母さん。』

如何して伯母さんが家に?。私が思いも掛けなかった人物がこの家に増えていたのだ。私はこの意外な事実に目を見張った。そしてその人物は誰あろう、普段家で私が殆ど目にした事が無い、父のすぐ上の兄三郎伯父の連れ合いに当たる伯母だったのだ。

 伯母さんは何時の間に家に来たのだろう。しかも私の知らない間に2階に迄上がっていたのだ。私は面食らった。ポカンとして口を開けると伯母の顔を見上げた。伯母は微笑んでいたが、何だかきまり悪そうな感じで私から視線を逸らせた。

「ねえさんは良いけど…、」

と、祖母は今下りて来た2人に顔を向けて行った。

「あなたは何が可笑しいの。」

「人の旦那さんに、調子が悪いと言うのに、笑うという事があるかい。」

と、祖母の言葉は小さくその声音も普通の調子だったが、彼女が明らかに立腹しているのだという事を私が気付く迄にそう時間は掛からなかった。伯母は顔を曇らせると、すみませんと小声で詫びを述べた。

 その後すぐ、祖母は自分達3人の傍から私を遠ざける為だろう、私に台所への仕事を言いつけた。奥の戸締りがきちんとしているかどうか、勝手口の戸締りの確認をさせに行かせたのだ。私が再び階段の部屋へ戻って来ると、階下には何と伯母に変わり、彼女の夫である三郎伯父がいた。そして祖母と伯父の間で何やら話し合いが行われている気配だった。


うの華 160

2020-02-17 08:46:05 | 日記

 程無くして、私が、1人孤独の所在無さを持て余す事に飽きる前頃迄には、2階の階段口付近に女性達の話声が聞こえて来た。

 この声々は、私には何だか聞きなれない声音ばかりに思えたが、彼女達の内で2、3の会話が進んでみると、それはやはり聞き慣れた祖母や母の声だった。

『他所の女性(ひと)達かと思ったけれど、お祖母ちゃん達だ。』

私はほっとした。これで私は1人っきりから解放されるのだ。喜んだ私は思わず笑顔になった。

 彼女達は祖母を先頭に2階から降りて来た。私が見ていると、階段を下る祖母はごく普通の足取りだった。祖母は先程私が目にした彼女の老衰した様子とは裏腹に、如何にも矍鑠とした婦人然として階下の私の目に映って見えた。彼女の顔付は引き締まり、手は階段の手摺を掴む事も無く、ピンと伸びた彼女の背は姿勢良く、ましてや彼女の目は自分の足元を窺い見る事も無く平然と下りて来た。

 祖母は自分の後方、階上にいる人物を気遣いながら、心配ない、薬が効いたんだね、よく眠っている、このまま寝かせて置けば、等話していた。そんな彼女の声の大きさも、普段と殆ど変わりの無い物の様に私には思われた。

 しかし気を張っていたらしい祖母は、階下に降り立つとやれやれと言う様に表情と姿勢を緩めた。私はそんな祖母の緊張が取れた顔をにこやかな歓迎の笑顔で見上げ、彼女を階下へと迎え入れた。そしてすぐにも慕わしく彼女の傍へ駆け寄ろうとした。と、そんな私に、祖母は急に顔の景色を変えてキッとした視線を投げつけて来た。

「何が可笑しいんだい。」

それは咎めるように鋭い口調だった。これは私に向かって投げつけられた言葉だろうか?。

 私は一瞬躊躇した。自身の顔の笑顔が少し引いた事が自らに分かった。が、1人孤独だった私の元へ今再び家族が姿を現し戻って来たのだ。彼等とて同じ、きっと同じ様にこの家の子供である私の姿を見て喜ばない事があるだろうか?。私は否と判断した。祖母にしても、自分の孫である私が笑って彼女を迎え入れる姿を喜ばない筈は無いと。きっと先程の祖母の言葉は、まだ上にいるだろう彼女の後方にいるだろう母に向かって投げ付けられた言葉なのだ。『そうだ、そうだ。』。私は一人合点した。


今日の思い出を振り返って見る

2020-02-17 08:42:15 | 日記
 
ダンスは愉し 24

 その後鈴舞さんは、雄介さんのその女性達から受ける人気が異常なまでに高い、という事実に気付くのにはそう時間が掛かりませんでした。何しろサークル練習終了前の、サークル員全員参加の乱舞......
 

 昨日は、こちらの地域でも春一番が吹いたのでしょうか?、物凄い風でした。今朝は未だお日様が差しています、小雨なども降っていました。これから曇りになるのかな、明日には雪が降るかしら。