Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(208)

2018-09-26 08:25:58 | 日記

 『何で?』

『お母さんは何で、今このお寺に来たのかしら?』

何時も、今迄も蛍さんは1人でここでこの遊びを練習して来たのです。が、母はちらっと覗きに来た程度、退屈そうに無言で彼女の傍に佇んでいたと思ったら、直ぐにじゃあねとばかりに会釈して帰ってしまったのでした。母はそれっきり、1度も心配したように蛍さんに声掛けしくれた事は無かったのでした。これに対して、父や曙さんが来た時には、挨拶程度の話しだけでも何かしら声を掛けてくれたのでした。彼等は2言3言話し掛けて、蛍さんの反応を見てから判断して帰って行ったのでした。このように今迄の母は全くの無言、無関心の有様でしたから、今回のこの初めての彼女に対しての対応を、蛍さんは妙にも不思議にも感じたのでした。

 実はこれは、先に帰った蜻蛉君が自分の親に蛍さんの様子が変だと訴えた事が原因でした。彼の親から彼女の親へとすかさず話は飛んで行き、そこで娘を心配した彼女の両親が相談すると、娘の事だからと母の方が出向いて来たのでした。その後母はここへ来る途中に茜さんに出会い、彼女から娘が一緒に帰らずに1人寺に残ったという話を聞くと、尚更に娘の様子が心配になって来るのでした。

 「ホーちゃん難しいから、私の事気に入らないみたいだし、叔母さんがあの子と遊んでやれば喜ぶんじゃないの。」

茜さんにそう迄言われていたので、母は娘に終始笑顔を向けると、『あの子が言ったように、私が一緒に遊んでやると喜ぶかしら。』そんな事を考えていました。

 「一緒に遊ぼうか?」

漸く彼女が言うと、この彼女の申し出に面食らっている娘に、早速あれこれと尋ねて石遊びの仕方を習うのでした。戸惑いながら遊びの説明をする蛍さんの話を聞く内に、彼女はふと気付く事がありました。地面に開いた穴や、石のころがし方等を聞きながら、彼女はゲームの盤面のそれまでの子供達の状況を把握して行きました。又、彼女は自分自身の幼い頃の遠い昔の記憶を呼び覚ましてもいたのでした。次第に彼女の顔色は険悪な物へと変わっていくのでした。


土筆(207)

2018-09-25 09:16:33 | 日記

 夢中で蛍さんが練習する内に、どの位経ったのでしょうか、寺の入り口方向から彼女の母の姿が現れました。母はすぐに境内にいる自分の娘の姿を見つけました。蛍さんもそんな母の様子を、彼女の姿が現れた最初の時から気付いていました。母は子供の様子を窺いながらすぐに声を掛けました。

 「ホーちゃん、」

そして蛍さんに近付くと、こんな所で一人で何をしているの、と苦しそうな笑顔を娘に向けて来ました。彼女は用心しながら娘に尋ねました。娘に泣きながら飛びつかれる事を恐れていたのです。彼女は育って結構重くなっていましたから、母にはその体重が負担に思えたのでした。

「石投げ遊びよ。」

勿論見ての通りだと、そう不服そうな顔で答える娘に、彼女は再び何時になく静かに微笑むと自分の顔を向けました。

「そう、でも、こんな所で一人で遊んでいるなんて、変じゃない?」

と問いかけるのでした。

 勿論、蛍さんだってこんな広い境内で、しかも1人だけで遊んでいる自分の姿を思い浮かべると、先程の恐怖心も思い起こされて来て母の言いたい事は十分に察しがつくのでした。彼女は難しい顔をすると自分自身内心で苦笑せずにはいられ無いのでした。そこで、「変だけど…」とぽつりと答えながら、彼女は何時もとは違う微笑を湛えた母の顔や、その母が自分に対して優しい物言いをする事を怪訝に思いました。今度は反対に、彼女自身も母の様子をしげしげと窺ってみるのでした。


天候が悪くて

2018-09-25 09:07:17 | 日記

 雨になって来たので早めに諦めました。今年はしませんでした。何時もはそれなりにしています。月見団子も食べたりするのですが、今年はそれもしませんでした。

 何故かと言うと、前日がお彼岸、それに向けて今年はお萩を手作りしました。お陰でたくさんのお萩が出来ました。しかも、練習で先週初めに作ったお萩です。半分を冷凍にしてありました。お彼岸当日は冷凍してあった物を解凍したのです。数が多く食べ出がありました。餡を市販品にしたので可なり甘い出来のお萩でした。甘いお萩を数多く、…胃もたれしました。翌日は餅系統の食品を食べたく無くなりました。お団子には気が向きません。雨です、お月見はお流れです。何もしない中秋の名月日でした。


土筆(206)

2018-09-23 10:36:40 | 日記

 まぁ、それはそれとして…、と、彼女は他の結婚相手の候補についても考え始めました。

「他も大事にしておかないとね。」

何処で自分の将来の当たりが付くか分からないのです。念の為にと、彼女は色々な嫁入り先を確保して置かなければいけないのでした。彼女は自分の将来のバラ色の生活について考える時、結婚相手の候補選びに余念が無くなるのでした。考え出すと、こんな所で一文にもならない気難しい従妹の遊び相手等、そうそう何時までもしていられないと思うのでした。

 さて、蛍さんの方は、自分の従姉に再試合を誘われて断り切れず、仕方無く、渋々次のゲームの準備を始めた所でした。茜さんは蛍さんの様子を窺いながら、折よく退散する頃合いを計っていました。彼女は如何にもふいっと思い付いたという調子で、1言、2言、従妹に帰宅が必要だと言い出しました。それから、一応一緒に帰らないかと誘ってみました。この時、彼女は臍を曲げている従妹が自分と一緒には帰りたがらないだろう事が分かり切っていました。事実従妹は後から帰ると返事をして来ました。『やっぱりね。』彼女は内心舌を出しながら、残念そうにそれじゃあねと別れの挨拶を告げました。茜さんはその場からドキドキの体で抜け出し、境内からもぎこちなく去って行きました。これで境内にはしかめっ面をした不機嫌な蛍さんだけが1人が取り残されました。

 「次の試合をしないなら、最初から誘わなければいいのに。」

茜ちゃんの方から誘ったくせに、等、1人ブツブツ文句を言いながら、蛍さんは何処まで癇に障る従姉なんだとぷりぷりしていました。『幾ら親戚だからって言ったって、私の我慢にも限度があるのよ。』と怒ります。

 しかし、事ここにおいて蛍さんにしてもこの広い境内に1人でいたい訳は無かったのです。唯、彼女にしてみると気に障る2人と、時を同じくしたり近くしたりして帰りたくなかったのでした。

 彼女は1人寂しくなった境内から一刻も早く離れ、直ぐにでも帰宅したい気持ちをぐっと抑えると、我慢してもう暫くここにいようと踏み留まっていました。それでも、もう少し、もう少しと痩せ我慢していると、結局何かしていないと恐ろしくなり、また手持無沙汰にもなって退屈して来るのでした。そこで彼女は自然にまた石投げの練習をする事にしました。あちらこちらと飛び歩くと、今度は穴が何処にあっても平気なようにと考えて、彼女はあれこれと遊びのシュミレーションをしてみるのでした。


土筆(205)

2018-09-23 10:02:54 | 日記

 幸いというのか、蜻蛉君の家は茜さんの家の極々近所にありました。彼女には兄達もいた事からその関係で男の子の遊び相手も多く、彼等の仲間に加わっている内に当の噂の主、蜻蛉君とも自然に近しくなる事が出来ました。その後の彼女の努力もあって2人は友達に成ったのでした。今や相当親密になり、今日のこの機会に彼女は彼の噂を確かめてみたのでした。

 『やっぱりね。』

世間の噂は当てになる物なのだと彼女は感じました。そして、やはり彼は噂通りの相当なお金持ちの家に繋がる子なのだと判断すると、自分の将来の結婚相手候補にこのまま挙げて置きたくなるのでした。『しかし、あの様子では無理という物だ。』と、因果を含められて直ぐの茜さんは無念にも悔しくも思いました。

 …それでも、何とか取りつく島は無いだろうか、そう考えながら、彼女は眼前の従妹がしゃがみ込んでくりくりと首を振る姿をぼんやりと眺めていました。静かなら何でもない子なのに…。『ふふふ、…』、茜さんはそんな従妹を、見た目だけは可愛い物だと思いました。ああやって黒いまあるい頭がふれふれと動くさまは小雀のようだと思い、そしてその瞬間、彼女はピン!と思い出した事がありました。

『そう言えば、あの子は小雀が好きだった!』

 そうです、蜻蛉君は小動物や虫など、可愛い生き物が大好きだったのです。成る程ね、それで彼はホーちゃんと遊んでいたいんだわ。茜さんはそう思い付くと、あの従妹を上手く利用して何とか自分がハニ―さんと入れ替われないだろうか等と考え始めました。たとえ入れ替われなくても、もう少し彼に近しくなって、何とか上手く裕福な財のおこぼれに与れない物かしらと考えたりしました。それ程までに、蜻蛉君は彼女が知っている男の子達の中では群を抜いてぴか1の裕福な暮らし向きの御曹司なのでした。