先に触れたエドガー・ヴィント著「シンボルの修辞学」でルネサンス人は掛け言葉が好きなことを知ったが、もしかしてバロック人も好きだったのではないか?とゆーような話を偶然仕入れてしまった(^^;;;
たまたま図書館で手に取った「美術史」(165号)で「ベルニーニの《バルダッキーノ》-リンチェイ・アカデミーの「アピアリウム」とバルベリーニ家のミツバチをめぐって」(佐藤仁・著)を読んだ。【参考】
バルダッキーノ(奥にはカテドラ・ペトリ)
ヴァティカンのサン・ピエトロ大聖堂バルダッキーノ(聖ペテロの墓上の主祭壇を覆う天蓋)はベルニーニによるバロックの象徴的作品だ。そのねじれた柱はエルサレムのソロモン神殿からもたらされたと言われる大理石の柱を模して制作されたものである。(大理石の柱はヴァティカン宝物館の入り口に展示してあった)
天蓋を支える柱
反宗教改革の勝利の誇示を意図したもののようであるが、造形的にはコンスタンティヌス帝の旧大聖堂の景観復活や初期キリスト教の伝統を誇示する意図も込められているようだ。
でも、何よりもこれを作らせたウルバヌス8世(マッフェオ・バルベリーニ)自身のプロパガンダ的色合いが濃厚である。このバルダッキーノにはバルベリーニ家の紋章であるハチがブンブン施されているのだから(笑)
ベルニーニ「ウルバヌス8世像」(カピトリーニ美術館)
柱を支える大理石土台には大きくハチの紋章が彫られ、本来柱にからみつくはずの葡萄はバルベリーニ家の好んだ月桂樹になり、天蓋部分を飾るたれ幕にもハチの紋章、頂上の十字架の下の太陽もバルベリーニ家の象徴らしい。
ブロンズ製柱の下の大理石台座。ちなみに、バルダッキーノ大理石台座の彫刻制作にはボッロミーニも参加しているらしいが、どの部分かは不明。
さて、佐藤氏の論文に戻るが、当時ガリレオが発明した顕微鏡によるミツバチの精密な観察図の載った「アピアリウム」(1625年)がウルバヌス8世に献上されたが、そのハチ図がベルニーニのバルダキーノに採用した紋章のハチの造形に影響を与えたのではないか?ということだった。
確かにパラッツォ・バルベリーニのハチよりもバルダッキーノのハチの方がずっと具象的なのだ。今回ローマで撮ったデジカメ画像から紹介すると...
パラッツォ・バルベリーニ(バルベリーニ国立古典絵画館)の扉。奥に見えるのはボッロミーニの階段。
パラッツォ・バルベリーニのハチ バルダッキーノのハチ
見難い比較画像ですみませんねぇ...(^^ゞ
そして、佐藤氏はハチの持つ寓意的意味を考察し、パルダッキーノの天蓋部のハチは頂上(APICE)の十字架を教皇=ハチ(APIS)が掲げるという、「救済」の教義を視覚化したものではないか、「アピス」の賭け言葉遊びがあったのではないか?とのことだった!
ルネサンス時代だけでなく、バロック時代においても賭け言葉遊びが美術に引用されているとしたら、これはなかなか愉快な話だと思いません?(^^;;;
※参考 : 「美術史」165号・平成20年10月(美術史学会)
「ベルニーニ ― バロック美術の巨星」(石鍋真澄・著/吉川弘文館・刊)
たまたま図書館で手に取った「美術史」(165号)で「ベルニーニの《バルダッキーノ》-リンチェイ・アカデミーの「アピアリウム」とバルベリーニ家のミツバチをめぐって」(佐藤仁・著)を読んだ。【参考】
バルダッキーノ(奥にはカテドラ・ペトリ)
ヴァティカンのサン・ピエトロ大聖堂バルダッキーノ(聖ペテロの墓上の主祭壇を覆う天蓋)はベルニーニによるバロックの象徴的作品だ。そのねじれた柱はエルサレムのソロモン神殿からもたらされたと言われる大理石の柱を模して制作されたものである。(大理石の柱はヴァティカン宝物館の入り口に展示してあった)
天蓋を支える柱
反宗教改革の勝利の誇示を意図したもののようであるが、造形的にはコンスタンティヌス帝の旧大聖堂の景観復活や初期キリスト教の伝統を誇示する意図も込められているようだ。
でも、何よりもこれを作らせたウルバヌス8世(マッフェオ・バルベリーニ)自身のプロパガンダ的色合いが濃厚である。このバルダッキーノにはバルベリーニ家の紋章であるハチがブンブン施されているのだから(笑)
ベルニーニ「ウルバヌス8世像」(カピトリーニ美術館)
柱を支える大理石土台には大きくハチの紋章が彫られ、本来柱にからみつくはずの葡萄はバルベリーニ家の好んだ月桂樹になり、天蓋部分を飾るたれ幕にもハチの紋章、頂上の十字架の下の太陽もバルベリーニ家の象徴らしい。
ブロンズ製柱の下の大理石台座。ちなみに、バルダッキーノ大理石台座の彫刻制作にはボッロミーニも参加しているらしいが、どの部分かは不明。
さて、佐藤氏の論文に戻るが、当時ガリレオが発明した顕微鏡によるミツバチの精密な観察図の載った「アピアリウム」(1625年)がウルバヌス8世に献上されたが、そのハチ図がベルニーニのバルダキーノに採用した紋章のハチの造形に影響を与えたのではないか?ということだった。
確かにパラッツォ・バルベリーニのハチよりもバルダッキーノのハチの方がずっと具象的なのだ。今回ローマで撮ったデジカメ画像から紹介すると...
パラッツォ・バルベリーニ(バルベリーニ国立古典絵画館)の扉。奥に見えるのはボッロミーニの階段。
パラッツォ・バルベリーニのハチ バルダッキーノのハチ
見難い比較画像ですみませんねぇ...(^^ゞ
そして、佐藤氏はハチの持つ寓意的意味を考察し、パルダッキーノの天蓋部のハチは頂上(APICE)の十字架を教皇=ハチ(APIS)が掲げるという、「救済」の教義を視覚化したものではないか、「アピス」の賭け言葉遊びがあったのではないか?とのことだった!
ルネサンス時代だけでなく、バロック時代においても賭け言葉遊びが美術に引用されているとしたら、これはなかなか愉快な話だと思いません?(^^;;;
※参考 : 「美術史」165号・平成20年10月(美術史学会)
「ベルニーニ ― バロック美術の巨星」(石鍋真澄・著/吉川弘文館・刊)
確かに、科学の発展が芸術にも影響を及ぼしている話は聞きますよね。例えば写真の発明とか・・。そしてこのミツバチのように、彫刻にも反映されているのですね。時代背景を知ると、芸術も別方向の視点からも見られるようになり、ますます面白くなりますね。
佐藤氏の記事の中で、「バルダッキーノで見られるトカゲが、トスカーナからの伝統であり、かつ、聖なるものの守護者としての意味を持ち、下に眠る聖ペテロの墓を守る役目を担っている」という部分にも非常に興味をそそられました。鋳造も詳細な部分に重要な意味があるのですね。
面白いお話をありがとうございます。
す...すみません、美術ド素人なのもので学者さんの論文も勝手に楽しんでしまいました(^^ゞ
Cojicoさんのおっしゃる通り、当時の最先端科学情報が芸術家たちの仕事にまで影響を与えるなんて驚きますよね。
で、やはりCojicoさんの興味の示されるところに、らしいなぁと微笑んでしまいましたです(^^;;;。教会建築の彫刻の面白さはCojicoさんのブログで勉強させていただいておりますが、それぞれの造形の意味するところが色々あるようですね。バルダッキーノのトスカーナ伝統的トカゲが当時どの辺まで広まっていたか...私も興味津津です(^^;;;