八ヶ岳山麓の山荘を建ててもらうにあたり、私が重要視した外観・構造的概念は3つ。
①山小屋風で小さいこと
②正面から見てシンメトリーでシンプルな外観であること
③内部では柱等の構造を見せて昔の民家風にすること
①と②はお金がなくても簡単に実現可能だ。と言うよりも、①はむしろお金がない施主らしいリクエストである。しかし③は別で、これをするには、ある程度以上の木材を用いなければ貧弱で見ていられない。したがって③はコスト上昇要因である。
都市郊外の2階建て住宅とは異なり、別荘地では多くの建物が2階の壁を立ち上げていない。1階の壁を立ち上げ、その上にすぐ傾斜した屋根を乗せる。カネ勾配(45度の傾斜)の屋根も多い。その傾斜した屋根の下の、屋根裏とも言えるスペースを2階として使うことで、建物全体の高さを低めに保つ。
この背景には、建築家の多くが建物は低い方が美しいと考えていることがあるようだ。建物がいかに森の中に埋もれ溶け込めるか、いかに周囲の景観へのインパクトを減らせるか、という工夫のひとつなのだろう。長野県内の大型管理別荘地内で外壁の色、最低区画面積、建蔽率、容積率等と同様に、建物の高さについての法的規制がかなり厳しいのも、同様な行政側の考えによるものと思う。
画像は我が山荘の天井。我が山荘でも、2階の壁を立ち上げてはいない。1階の桁からいきなり屋根が始まるのである。私は屋根の構造、特にのぼり梁というものに憧れを持っていた。内部に壁面の柱や梁の構造を見せることにもこだわったが、屋根の勾配に沿って斜めに延びるのぼり梁を特に見せたかったのである。
小さな小屋でこんな大げさなことをしなくても、普通は桁、棟木の上にもっと薄い垂木を載せてしまえば、屋根の構造が完成する。内側から最終的にこれら全部を天井材となる板で塞ぐと、何も見えなくなる。それが普通の天井であろう。我が山荘では桁や棟木の上に太いのぼり梁を載せて、それを意図的に内側に見せているのである。
2階の屋根裏スペースを、山荘では寝室に充てている。この小さな山荘にはここしか寝室になりうる場所がない。私がのぼり梁をジッと見るのは、風呂上りで寝る前の時間に、ベッドに仰向けになっている時だ。のぼり梁が棟木と交差しているところを見て一人悦に入る。しかしその状態になると、私はたいして長い時間を起きていられず、たいていはすぐに寝てしまう。