Reflections

時のかけらたち

Giant

2021-11-03 23:52:29 | movie

ジェームス・ディーンの遺作をちゃんと見たいと思っていました。
たぐいまれな演技力を持っていたジェームス・ディーン。

どの作品もそこにいるのはジェームス・ディーンそのものでした。

彼はGiantでも最もインパクトの強い独白のシーンを自分で作って、監督を説き伏せたという。
エデンの東ではアドリブが多くて、父親役のレイモンド・マッセィを本当に怒らせて、いい芝居になったとか。
彼の出演する映画には痛々しいほど彼があらわています。

私がこの映画を初めて見たのは小学生か中学生の頃、TVで日本語吹き替え版を放送していました。覚えているのは
レズリーの子供たちが名前を付けてかわいがっていた七面鳥がクリスマスの食卓に出てきて、みんな泣いてしまって
収拾がつかなくなったかわいいシーン。翌日だったか学校でその話をしたことを覚えています。子供心に
老け役のジェームス・ディーンは今でいうと田代まさしみたいなちょび髭でかっこ悪いと思っていました。

60年ぶりくらいにちゃんとこの映画を見たら、なかなかの名作でした。撮影時にはジミーもリズも23歳。そしてロック・ハドソン
出さえ28歳という若さで、老け役をこなしていました。

ジェームス・ディーンの演じるジェットの存在が大きく、それもジミーでなければここまで陰影のある役にならなかった
と思います。ジェームス・ディーンなくして、この作品はありえないとも言われています。ジェームス・ディーンという人は
心の動きを演じることができる俳優です。レズリーに対する思いが痛いほど伝わってくるシーン。目の演技も素晴らしいです。

エリザベス・テイラーもあの若さで貫禄のある堂々とした演技でした。最初候補にグレース・ケリーがあがっていたとか。
あの頃の映画は「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リーといい強い女性を描いていますね。南部の女性蔑視や
人種差別に対して、はっきりとした態度をとっていくレズリー。海外の戦争で国民を失っていくアメリカの姿は
今も昔も変わらないことを感じた歴史大作でした。メキシコ人から土地を奪って、今ではヒスパニックの多いアメリカ。

そんな中でも、差別に対して、今まで戦うことのなかった、ビックがそれに立ち向かい、叩きのめされてしまっても
今まで守ったことのない人のために戦った夫をたたえてレズリーがベネディクト家は100年かけて真の成功者になったと話す
シーンが Giant の映画のタイトルの由来となっています。メキシコ人を妻にした息子の子供と娘の子供の面倒を見て、二人が
人種を超えて仲良くしているシーンがラストシーンです。ここに希望を託した映画でしたが、まだまだ今のアメリカには問題は
そのまま残っているというかますます激しくなってきているようにさえ思えます。

この映画の一番強烈なシーンは最後のジェットの演説で、酔いつぶれて、自分の思いと過去を吐露するシーンです。
このシーンはほとんどジェームス・ディーンが作ったとのことですが、まるで成功しても心が満たされない
自分自身の思いをぶつけているように痛々しい演技でした。共演者がそのまま泣いてしまっているのが映し出されて
います。借りてきたDVDには監督のジョージ・スティーブンスの息子のジョージ・スティーブンス・ジュニアの
解説が入っていて、それがとても面白かったのですが、共演者は感動して泣いてしまったとのことです。
また、レズリーの娘役を演じたキャロル・ベイカーはジミーと同じアクターズ・スタジオの出身でリズより年上だった
ということです。アクターズ・スタジオ出身で舞台俳優だったジミーはハリウッド映画のスターたちとは違う演技
だったと話していました。ディーンは想像力が豊かでいくつものヴァリエーションを考えていた、写実的表現の俳優だったとか。

ジェームス・ディーンはこの映画の完成前に事故で亡くなりました。彼の部分の撮影が終わったところで、スポーツカーに
乗ることを監督は許可したとのことで、それ以前はこの映画には多くの人がかかわっていてその人たちの生活がかかって
いるのでもし怪我でもして撮影ができなくなれば大変だと禁止されていたそうです。そしてカーレースに出たいと
話した時も車の移動はトラックでと監督が行ったにもかかわらず自分で運転して事故にあってしまったとのことです。

リズはショックで寝込んでしまいましたが、撮影が再開され、最後の年取った夫婦の過去を振り返るシーンが
撮られ、ジミーのおかげでみんな本当に年を取ってしまったような深みのあるシーンになったとのことです。

 

この映画の撮影中、ジェームス・ディーンとエリザベス・テイラーはよく話し合っていたそうです。エリザベス・テイラーが
亡くなったあとで公開してもいいというジミーの不幸な過去がリズの死後知らされました。リズはジミーを愛していたと語り、
不幸の連続だったとも・・・ リズ・テイラーはジミーの最後の理解者だったのでしょうね。

 

James Dean / Giant (film)ジャイアンツ(映画) / ジェームズ・ディーン

 

1956年製作/201分/アメリカ
原題:Giant
配給:ワーナー・ブラザース映画
日本初公開:1956年12月22日

キャスト

 

スケールの大きな南部の歴史物語でも、普通のどこにでもいるような夫婦の話でもあり、よく作られていたと思います。

 

コメント
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