東京新聞に連載しているコラム「言いたい放談」。
今回は、ドラマ「ダブルフェイス」(TBS&WOWOW)について書きました。
TBSでも、年明けには、WOWOWでやった「後編」を放送するみたいです。
共同制作ドラマの秀作
久しぶりだった。ドラマの続きを心待ちにするなんて。TBSとWOWOWの共同制作ドラマ「ダブルフェイス」である。
TBSが今月十五日に流した「潜入捜査編」は、ヤクザの幹部になっている捜査官(西島秀俊)が主人公。
その闇組織のボスに育てられ、今はスパイとして警察内部に潜む刑事(香川照之)を描く「偽装警察編」は、二七日にWOWOWで放送された。
正体を暴かれることへの恐怖。本当の自分が見えなくなる不安。そんな葛藤を抱えた男たちを、それぞれの代表作になりそうなハマり方で、二人の俳優が演じている。
また映画のようにワンカットずつ丁寧に撮影された、陰影のある映像にも力があった。監督は「海猿」の羽住英一郎だ。
通常のドラマと比べて数段高い完成度は、二つの放送局が手を組んだことによる成果だろう。
特にWOWOWにとって今回のチャレンジは大きい。このドラマを見るために加入した人は少数でも、放送局としての姿勢や意欲をTBSを通じてアピールできたのだから。
放送界も生き残り競争の時代。不動産業、ウエディング事業、通販にオンラインゲームと、各局は「放送外収入」の確保にやっきとなっている。
しかし本来の放送事業、本線の番組作りの中にこそ、国民の共有財産である電波を使う“免許事業者”としての足場があるはずだ。
(東京新聞 2012.10.31)