河太郎の読書日記

本とか映画とかいろいろ

彼方なる歌に耳を澄ませよ

2006-11-11 23:01:30 | 読書(小説)
アリステア・マクラウド。新潮クレストブックス。
「灰色の輝ける贈り物」「冬の犬」は短編集だったけど、
これは、長編。
短編よりも、おもしろかった。
「百年の孤独」とか「ブッテンブローグ家の人々」とかそういう
一家の系譜をつづる物語とはちょっと似てて、ちょっと違う。
18世紀末にスコットランドからカナダ・ケープ・ブレトン島に
移り住んだ「キャラム・ルーア」の一族。
語り手の「私」はその末裔、「ギラ・ベク・ルーア(赤毛の男の子)」アレグザンダー。
異郷の地で、赤毛や双子を見かけては、クロウン・ルーア(ルーア家の末裔)か、と
旅先で親切にされたり、初対面の人々とゲール語の歌で盛り上がったり。
歴史は、教科書に載っているものではなく、すぐ身近にあるものなのだ、彼らには。
スコットランドのおじいさんと、カナダのルーアの子孫は同じようにいうのだ。
300年前のことを「あのとき、フランスの船がきてくれていたらなあ!」と昨日のように。
長兄キャラムや「私」の双子の妹との昔話、おじいさんやおじいちゃんとおばあちゃん、
ちいさな物語がたくさん詰まっていて、失われていく歴史を記録しようとしている。
人一人死ねば、その人の関わってきた記憶の中の人々も死んでしまう、という話を
また思い出す。人間って、はかない生き物だと、強く思う。
コメント
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