河太郎の読書日記

本とか映画とかいろいろ

奇跡も語るものがいなければ

2006-11-24 22:26:42 | 読書(小説)
ジョン・マクレガー。新潮クレストブックス。
最近海外小説ばかり。高校生の頃から海外文学一筋だったなー。
一時日本文学も読むようになったけど、結局戻ってきた。
この小説は、かなり斬新な語り口。
歌うような、言葉がつらなり、言い換えて繰り返すことで頭に映像が焼き付くような、
不思議な感覚。単純な言い回しで、日常の情景を伝えていく。
3年前の夏が終わる日、その街で、なにか悲しい出来事が起こる。
3年後、22番地の少女が、妊娠してしまってうろたえている。
2つの出来事が交互に語られる。
丁寧に、夏の1日が、細かい細かいところまで描き出される。
そうすることで、この本のテーマの一つ「毎日が、小さな奇跡の連続」というようなことが表される。
表題は、妻を火事でなくした火傷のある父親が、娘に向かっていう言葉。
「この世界はとても大きくて、気をつけていないと気づかずに終わってしまうものが、
たくさん、たくさんある」。
だから、ちいさな、日常のちょっとした一こまを、作者は、丁寧に丁寧に描く。
その事件だけが、この一日のすべてではない。
18番地の少年にとっては、人生の転機になり、
老夫婦にとっては、結婚記念日で、車を購入した男の子には悪夢の日で、、、
ファンタジーのようでいて、とても現実味があって、怖い。
それ以外に、「双子」「名前」がキーになっている。
最初は読みにくいと思ったけど、続きが気になって、その節回しが心地よくなってきた。
コメント
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