河太郎の読書日記

本とか映画とかいろいろ

ルリユールおじさん

2006-11-19 22:58:59 | 読書(その他)
いせひでこ。理論社。
お気に入りの画家の絵本。
「1000のチェロ・・・」と「絵描き」となんだか横長シリーズだ。
お気に入りの植物図鑑が壊れてしまった女の子が、
ルリユール(装丁師)のおじさんの元を訪れる。
女の子とおじさんの会話がちょっとずれているのがほほえましい。
かっこいいなあ、ルリユール!
古い本を、打ち直して、新たな表紙をつけ、文字を打ち、本を生まれ変わらせる。
父からその技術を受け継いだおじさん。
年老いて、子どもの頃見た、父の魔法のような手技を思い浮かべ、つぶやく。
「わたしも、魔法の手を持てただろうか。」
古い樹木が主人公のような顔をしているパリの街並みもいいな。
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銀のロバ

2006-11-18 16:28:00 | 読書(小説)
ソーニャ・ハートネット。主婦の友社。
「木曜日に生まれた子ども」の著者。
あの本も児童文学ってことになっていたが、
暗くてもの悲しい物語だった。
この作品は、もうちょっと明るい。
マルセルとココの姉妹がフランスの森の中で見つけた盲目の兵士。
戦場から逃げてきた彼(シェパード中尉)を匿い、
なんとかドーヴァー海峡を越え病身の弟が待つふるさと、
イギリスに帰れるよう、算段を尽くす。
兵士が大事に持っているのが、弟のくれた銀でできたちいさなロバの置物。
話の間間に、兵士がロバにまつわる物語を語る。
世界は、美しいのに、醜い行為を重ねて我々は生きている・・・。
兵士は、まっすぐに物事を見つめられるように、なったろうか。
親切にする姉妹も、マルセルは「人に優しくしたい」からであり、
ココは、「ロバをくれないかな」と密かに思い続けている。
二人の兄のパスカールは、勇敢な戦争の話が聞きたい。
思いは、少しずつずれているけど、兄妹が兵士を助けようとしたのは事実。
ほんわり優しい話だけれど、その奥にいろいろなことが描かれていると思った。
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狛犬かがみ

2006-11-16 20:30:26 | 読書(その他)
狛犬の本。写真がいっぱい。半分英語。
しかもやすいよ、こういう本にしては。1700円。
いつの頃からか、狛犬をみたら写真を撮るようになったけど、
どこの狛犬だったかなんてもう覚えていないさ。
この本は、狛犬の写真図鑑。狛犬の分類っつーか歴史、石工まで網羅。
この狛犬かわいー、こっちこえーやレベルの私には、
へえーーーーーーってなもんですが。
写真がかなりきれいです。
玉乗りだの角付きだの古今東西の様々な狛犬たち。
どうせなら、もちょっと歴史も勉強して、彼らの来し方に
思いを巡らすのも、いいか。
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彼方なる歌に耳を澄ませよ

2006-11-11 23:01:30 | 読書(小説)
アリステア・マクラウド。新潮クレストブックス。
「灰色の輝ける贈り物」「冬の犬」は短編集だったけど、
これは、長編。
短編よりも、おもしろかった。
「百年の孤独」とか「ブッテンブローグ家の人々」とかそういう
一家の系譜をつづる物語とはちょっと似てて、ちょっと違う。
18世紀末にスコットランドからカナダ・ケープ・ブレトン島に
移り住んだ「キャラム・ルーア」の一族。
語り手の「私」はその末裔、「ギラ・ベク・ルーア(赤毛の男の子)」アレグザンダー。
異郷の地で、赤毛や双子を見かけては、クロウン・ルーア(ルーア家の末裔)か、と
旅先で親切にされたり、初対面の人々とゲール語の歌で盛り上がったり。
歴史は、教科書に載っているものではなく、すぐ身近にあるものなのだ、彼らには。
スコットランドのおじいさんと、カナダのルーアの子孫は同じようにいうのだ。
300年前のことを「あのとき、フランスの船がきてくれていたらなあ!」と昨日のように。
長兄キャラムや「私」の双子の妹との昔話、おじいさんやおじいちゃんとおばあちゃん、
ちいさな物語がたくさん詰まっていて、失われていく歴史を記録しようとしている。
人一人死ねば、その人の関わってきた記憶の中の人々も死んでしまう、という話を
また思い出す。人間って、はかない生き物だと、強く思う。
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ある秘密

2006-11-09 23:01:13 | 読書(小説)
フィリップ・グランベール。新潮クレストブックス。
フランスに住むユダヤ人の物語。
堅い説明はなく、語り手の「僕」が、知ってしまった両親の秘密を語る。
スポーツマンの父母の間に生まれたのに体が弱くて、
コンプレックスを持っている「僕」は、空想の兄と遊んでいたが、
本当に兄がいたことを知る。
兄の物語をたどることは、父母の歴史をたどることにもなり、
少年は、大きな秘密を抱えることで大人になった。
父母は、この秘密を抱えきれず、哀れな末路を遂げることになるが・・・
軽く読める、重い本。
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