何年か前に夢枕獏氏の「神々の山嶺」を読みました。あとがきだったかに、獏氏が編集者だったかに「新田次郎氏が亡くなってから山岳小説作家がいなくなっている」と言われて神々の山嶺を書いたみたいな事が書いてありました。
雄大な風景描写と細かな心理描写の塩梅がよく、スピード感を持った読み応えのある小説でした。でも残念ながら、それは新田次郎氏の書きつづけたアルピニズムを踏襲するものであったように思います。
北杜夫氏が亡くなりました。大歌人、斎藤茂吉の子と言うだけで驚いてしまいます。
僕は「ドクトルまんぼう」も「夜と霧の隅で」も読んだ事はありませんが、「白きたおやかな峰」は何度も読みました。読みたい時に捜すと見つからないので、文庫本を何冊も持っていると思います。本人がデュラン登山隊に医師としていった時の経験を基に書いたと言われています。アルピニズムとチームワークとそれを取り巻く環境を細かく描いた本です。大変に示唆の多い傑作と思います。今回の新聞の追悼集にはちっともこの本の名前が出てきませんでした。と、言う事はもしかしたら「ドクトルまんぼう」は「白きたおやかな峰」を遥かに上回る傑作なのかも知れません。早速、明日、買ってこなくてはなりません。
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