内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

文化生成のダイナミクス―断裂と継承、もしくはミメ―シス問題 ― 21日のパリ第7大学研究集会を振り返って

2014-01-24 01:15:00 | 雑感

 21日火曜日はパリ第7大学での研究集会に参加した。集会のテーマは、今日の記事のタイトルに掲げた通り。明治大学とパリ7との共同企画。発表者三人はすべて明治大学の教授たち。
 午前中は、合田正人氏による鶴見俊輔ついての発表。タイトルは、「日本のプラグマティスト、鶴見俊輔 ― 哲学の刷新とアジアの薄暗」。鶴見の『アメリカ哲学』を主な対象としたフランス語での発表。内容豊かで、とても刺激的だった。これに対して私はディスカッサントとして参加。氏から予め送られてきたテキストについて用意しておいた質問を一通りした後、他の参加者も交えてより自由で活発な議論が行われた。私の質問はすべてフランス語で行われたが、他の参加者からの質問の一部は日本語でされ、議論も一部は日本語で行われた。
 午後は、森鴎外についての発表二つ。井戸田総一郎氏の「鷗外の演劇言語にみる近代」と大石直記氏の「晩期鷗外文学における伝承性への視角 ― 或いは、模倣と創造の交差する場へ」。こちらは発表も質疑応答もすべて日本語。両者の鴎外へのアプローチは異なっているが、どちらの発表も鴎外の文学作品全体への理解を深めさせてくれる洞察に満ちた内容だった。フランス側からは、パリ7の坂井セシル教授とイナルコのエマニュエル・ロズラン教授がディスカッサントとして参加。この午後の部でも私は自分の意見と感想を述べさせてもらった。
 それぞれ発表が一時間、その後の質疑応答もそれぞれ一時間余り。参加者は十数人だったが、それだけに、午前も午後も大変に密度の高い議論をすることができ、日本から来た三人の発表者たちも大変喜んでいたようだし、私自身大変得るところの多い研究集会だった。
 その内容を私自身が反芻し、そこからの新たな思索の展開の方途を探るために、明日から、三つの発表のそれぞれについてその内容を紹介し、それに対する私の感想も記していきたい。