内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

無事帰国 ― 冬の暗いパリに戻る

2014-01-07 18:46:00 | 雑感

 今朝6時過ぎにシャルル・ド・ゴール空港に到着。機内は満席だったが、日本時間で午前零時半発なので、ほとんどの乗客は最初の簡単な飲み物と軽食のサービスが終わると寝てしまう。私もそうだった。今回の滞在中、心身ともに思っていた以上に疲れていたということもあったのだろう、サービス後すぐに睡魔に襲われた。時々目は覚ましたものの、計6時間くらい寝た。空港からはいつものようにRERのB線に乗る。途中駅で事故があり、20分ほど電車の到着が遅れるとのアナウンスがホームに流れたが、実際は十分ほど待っただけで電車が来た。
 空港第二ターミナルは始発駅だから、まず間違いなく座れるのだが、旧型車両だと車内に特に荷物置き場がないので、混んでくると大きなスーツケースなど他の乗客の邪魔になる。空港からは当然旅行客が大きな荷物を持って乗ってくる路線なのに、そのための配慮が旧型車両には一切なく、しかもこれでよく先進国面ができるものだと言いたいほど車両内外ともに汚い。ビニール製の安物シートなどいたるところで裂けている。清潔そのものの日本の電車に慣れた日本人観光客など、「花の都」へと乗客を運ぶ電車がこの様かとショックを受けてしまってもおかしくないほどである。ただ、幸いなことに、ニ、三年前から段階的に導入されている新型車両は、とにかくまだ新しいから綺麗だし、シートもフェルト地、デザインも悪くない。それに荷物置き場がかなり広く確保されている車両もあり、快適性は格段に増した。だから、この新型車両に「当たる」とちょっと嬉しい。今日は残念ながら「はずれ」。
 夏の帰国時の記事でも触れたが、RERのB線は空港からパリ市内に入るまでの間に、パリ郊外で最も治安の悪い地区を通過する。今日私が乗ったのは、週日の通勤時間であり、しかも電車の遅れがあったから、途中駅からの乗客はおそらく普段以上に多かっただろう。日本の通勤ラッシュに比べればたいした混みようではなかったが、何かフランス社会の暗部を目の当たりにするような暗い顔が犇めいていた。電車はパリ北駅までは一部区間を除いて地上を走っているが、まだ日の出前だったこともあり、まるで出口のない暗いトンネルの中を進んでいるような印象にとらわれてしまった。多くの乗客は北駅とシャトレー・レ・アール駅で降りてしまうし、そこから乗ってくる乗客たちの顔はすでに違う。これは何の予備知識なしに乗降客を見ているだけでわかることである。
 シャトレー・レ・アール駅から四つ目のダンフェール・ロシュロー駅で下車。もう夜も明けている。いつものように、本が一杯詰まった重い小スーツケースと衣類その他の軽いものを詰めた大きなスーツケースを、駅に向かう通勤客とは反対の方角にゴロゴロと押しながら、長い坂を下る。途中二度ほどバランスを崩して転けそうになりながらも、無事自宅に帰り着いた。
 機内でよく寝られたせいか、疲れも感じない。直ちに二つのスーツケースの中身を全部出し、衣類等しまう場所の決まっているものは全部元の場所に戻し、一時間ほどで片付け終了。机の上に積み上げられた今回持ってきた本を目の前にしながら、この記事を書いている。今午前10時45分。昼までは少し休憩して、午後からは普段通りのパリ生活に戻る。