内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

夏休み日記② この夏一番の暑さの中、衝撃的ニュースがメディアを駆け巡る

2014-08-05 16:53:36 | 雑感

 今日も午前十時からプール。夕方まで外出の予定もないので、一時間二十分ほどゆっくり泳ぐ。この夏一番の暑さになるという予報を朝のテレビニュースで見て、水泳へのモチベーションも高まるというものである。校舎の屋上にあるプールの水は、まだ誰も入っていないのにすでに生温い。背泳ぎで見上げる空には、雲もほとんどなく、眩しい太陽が照りつける。ときどきヘリコプターや飛行機が青空を横切る。
 昼前に帰宅し、正午からのニュースを見て一驚する。例のSTAP細胞論文の共著者であり、O女史の論文執筆の監督指導責任を厳しく批判された、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が自殺したという報道。まだどうしてこんなことになってしまったのかよくわからないが、少なくとも言えそうなことは、これは単なる特定の個人に発生した悲劇では済まされない、日本の科学研究と科学行政とのあり方に巣食う深刻な問題の露呈なのだろうということである。
 専門的なことはまるでわからないし、論文についての疑義が大々的にメディアに乗るようになってから、ネット情報だけで関連ニュースを海外から追っていただけだが、何か妙に問題の核心から逸れた話ばかりが飛び交っていて、なぜまず純粋に科学研究上の問題として実験による検証が直ちに行われないのか疑問に思っていた。その検証実験の結果がようやく今月半ばに発表されようというこの時期に、今回の騒動の鍵を握る人物の自殺である。しかも、それは再生医療の分野での世界的リーダーの一人と見なされていた超優秀な研究者の自殺である。
 比喩的な言い方になってしまうけれども、何か今の日本は深いところで病んでいるように感じられる。それが見かけ上の日本経済の回復基調と現政権の上辺の「明るさ」と好対照をなしている。太宰治が『右大臣実朝』の中で実朝に平家について言わせた一言を思い出す。「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。」