昨日、東洋大学大学院教務課から来年度夏期集中講義「現代哲学特殊演習」のシラバス作成依頼が届いた。これで八年連続でこの博士前期課程の科目を担当することになる。
これは、教える側にとって大変ありがたい科目で、基本的に、教員がやりたいことを自由にやってよいのである。つまり、今自分が考えていること、考えたいこと、考えるべきだと思っていることを自由にテーマに選んでよい、ということである(と私は理解している)。
過去七年を振り返ってみると、「主体の考古学」「鏡の中のフィロソフィア」(二年連続)「種の論理」(二年連続)「技術・身体・倫理」「自然と技術」などのテーマを取り上げた。
いずれの場合も、最初にテキストありき、ではなく、まず基本的な問題を提起し、それに関連するさまざまなテキストを読んでいくというスタイルをとってきた。とはいえ、五年目までは、事実上、テキストを読むことを中心に演習を構成していた。しかし、ここ二年ははっきりと問題提起型にシフトし、読解用テキストはあくまで議論のきっかけにしか過ぎなくなってきた。
このアプローチのメリットは、関心を異にした学生たちがそれぞれの立場から問題を自由に論じやすいことである。実際、彼らにとってもこれは他の演習ではなかなか経験できないことだったので、おおむね好評であった。
デメリットは、議論が拡散しやすく、地に足の着いた議論を積み重ねていくことを忘れがちになることである。あれこれ問題は提出されたけれど、さてそれをどう考えていったらいいのかについては中途半端に終わりやすいということである。
さて、来年度はどうするか。この演習の内容をあれこれ考えるいるときが愉しいのである。シラバスの締切りは1月17日だからまだ一月以上ある。他の仕事が山積しているからのんびりとはしていられないが、このシラバス作成過程を自由な哲学的思考の時間として楽しみたい。