国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

中高生のための内田樹(さま)その49

2025-01-06 22:02:09 | 中高生のための内田樹(さま)

●精選構文風。YouTubeで柳生好之氏という現代文講師の方がいらっしゃると知った。

 実に時代遅れの国語屋である。

 代ゼミの「英語」講師である富田先生の影響を受けて国語を得意科目とされたそうである。

 【単語→構文・文法→解釈】との順番で解説をしていらっしゃるらしい。

 早速、2冊を注文したが、届く前に自分なりに実践してみた。

 これと方法が違うなら、オリジナルと言うことになるか。

 代ゼミの精選構文のテキスト思い出しながらの想像である。

 代ゼミの英語の鬼塚幹彦師の影響が大きいか。あと、初期、田村秀行師の影響も。

●余談だが(飛ばして読んでいいよ)、鬼塚幹彦師はスーパー東大英語を講義されていたのだが、わたしはその裏のスーパー東大現代文の講義を担当していたのである。

 今、考えると恐ろしいことである。

 鬼塚幹彦師と比較すればわたしのレベルなんて...。

●閑話休題。実際に私なりに行ってみた。

●なお、文章は本ブログの「中高生のための内田樹(さま) その40」よりとった。

 ⓵「反知性主義」という言葉からはその逆のものを想像すればよい。②反知性主義者たちはしばしば恐ろしいほどにもの知りである。③一つのトピックについて、手持ちの合切袋から、自説を基礎づけるデータやエビデンスや統計数値をいくらでも取り出すことができる。④けれども、それをいくら聴かされても、私たちの気持ちはあまり晴れることがないし、解放感を覚えることもない。⑤というのは、この人はあらゆることについて正解をすでに知っているからである。(中略)⑥「あなたの同意が得られないようであれば、もう一度勉強して出直してきます」というようなことは残念ながら反知性主義者は決して言ってくれない。
(内田樹「日本の反知性主義者たちの肖像」)

⓵「反知性主義」という言葉からはその逆のものを想像すればよい。

反~・・・対比を作る。ということは、その反対側があると予測・イメージするように気をつける。

知性

物事を知り、考えたり判断したりする能力のこと。通常は「知性が低い」などのように「高低」でレベルわけされる。

主義・・・継続的にもっている思想上の立場。常常もっている意見・主張のこと。よくある慣用的表現として「主義を曲げない(=主義を一貫させる)」がある。

◆反知性主義

 ここまでを踏まえると「知性と反対の思想上の立場」でかつ、知性が「高い・低い」と違うレベルで語っているということになる。

◆~は・・・主部を表すことが多く、大主語(一文内部に小さい主語=「が・の」による主語を有している場合)を作る。さらに語の性質として「対比」「強調」を表す。「ぼく行く」「ぼく行く」「ぼく行く」

◆~からは・・・ここでは助詞(「の」以外)がついているので、ここでは主語ではなく強調・対比と考える。

◆その逆のもの・・・「その」=反知性主義。「逆」=対比をつくる

◆~ればよい・・・作者の促し表現

◆この文の主語・・・「は」を続けたくないせいか、当たり前の主語なので省略されている。ここでは「読者の方は」が省略されている。

◆術語(専門用語)に注目。ここでは「反知性主義」。特に段落の一文目なので以下、「反知性主義」「反知性主義者」の解説が来る可能性が高い。いわゆる英語の読解で言うトピックセンテンスである。

●解釈

「反知性主義」ということば一般に「反」知性というように知性がないと考えられがちだが、その逆で知性を有している考えだと読者は考えるのが望ましい。

②反知性主義者たちはしばしば恐ろしいほどにもの知りである。

◆反知性主義者たちは・・・主語。複数形。

◆しばしば・・・同じ事が何度も重なって行われるさま。たびたび。ここでは全肯定ではないと受け取るとよい。「常に」とは違う。

●反知性主義者たちはたびたび恐ろしいほどにもの知りである。(したがって「反」知性主義者は知性を持たないという考え方のものではない)

③一つのトピックについて、手持ちの合切袋から、自説を基礎づけるデータやエビデンスや統計数値をいくらでも取り出すことができる。

◆トピック・・・題目。話題。

◆合切袋・・・財布・ちり紙などこまごました携帯品を入れる手提げ袋。関連:一切合切=全部。残らず。すべて。全然。いっさい。ここでは自分(反知性主義者)が有している知識など全部。「袋」は比喩。筆者はちり紙のようなつまらないものを暗示している。なお「合切袋」については「一切合切」の意味から類推する程度でよい。

◆エビデンス・・・「証拠・根拠・証言」のこと。客観的なというニュアンスを含むことが多い。

◆客観・・・「客=外側の存在」から「主観の対象になるもの。主体から独立したもの」。「主観」は「主体=自分(たち)からの見方・考え方」

◆観・・・見方、考え方。例:人間観=人間についての見方、考え方  注意!価値観=良い悪いについて考えること。

◆取り出す・・・「袋」の比喩に対応した表現。

◆できる・・・主語が省略されている。「誰ができる」のか、前の話題から省略しても理解で来る語句である。主題である「反知性主義者」が主語。

●ある特定の話題についてこまごまとした手持ちの知識から自分の説を基礎づけるデータや証拠をいくらでも出すことができる。

④けれども、それをいくら聴かされても、私たちの気持ちはあまり晴れることがないし、解放感を覚えることもない。

◆けれども・・・重要接続表現である「逆接(対立することを結びつける)」の言葉である。対比が生じる。また、多くの場合、その後方が主張になる。

◆それを聴かされも・・・「それ」の内容は「聴く」ものである。したがって、「反知性主義者の自説」である。「ても」は逆接表現なので「それ」をうけいれられないことを予測する。

◆気持ちが晴れる・・・心配や疑念が消えて明るい気持ちになること。ここでは「ない」とあり、納得できないということ。

◆解放感・・・制限や束縛から自由になり(開放され)、ほっとする・のびのびできる気持ちになること。

◆Aし、Bも・・・AとBを並列の関係で結んでいる。並列とは同じ種類の情報を並べるということである。

 したがって、「気持ちが晴れる」と「解放感」は同類である。同類の情報を並べるのは読者が理解する可能性を増やすため。

◆「気持ちが晴れる」「解放感」・・・プラス表現であることが多い。

◆ない・・・否定表現。対比も作る。「反知性主義」の反対語である「知性主義」は「気を晴らす」「解放感」を与えるということもわかる。

⑤というのは、この人はあらゆることについて正解をすでに知っているからである。

◆というのは~からである。・・・前の文の理由を表す。「というのは」以外にも「なぜなら」も同様の意味。

◆この人・・・「あらゆること~知っている」=③の主語の省略でも推測できると思うが、「反知性主義者」である。

◆すでに・・・「前もって、昔から、以前から」という表現から未来性がないことがわかる。

◆あらゆることについて~知っている・・・他者・他人から「教わる」などの要素がない。

⑥「あなたの同意が得られないようであれば、もう一度勉強して出直してきます」というようなことは残念ながら反知性主義者は決して言ってくれない。

◆あなたの同意・・・「あなた」は先に挙げた「他者・他人・他の情報源」をしめしている。

◆「もう一度勉強して出直してきます」というようなことは・・・主部ではなくここでは「を」で、目的語。それを強調するために「は」を使用している。

◆残念ながら・・・マイナス表現。「気が晴れる」「解放感」と対比する。

※誰から見てマイナスか。評論文では多くの場合、筆者。評論文で「筆者の主張」が書かれているのである。ただし、現代文の問題だと「次の文章」の範囲でだが。

◆決して~ない・・・強い否定表現。筆者は多くの場合、それと逆のことを望んでいる。つまり、「~、勉強して出直す」にプラスイメージを持っている。また、「残念ながら」とあるので「反知性主義者」はマイナス=作者の主張の逆のベクトルである。

◆筆者にとっての「知性主義者」とはあらゆることをすでに知っているのではなくて、相手の同意が得られない場合、勉強をして出直す存在である。

●④~⑥「反知性主義者」は前もってあらゆることを知っているので、もう一度勉強して出直すことをしないし、あなたの同意をなくても良いと考えているので、残念ながら私に解放感を与えることはない。

※現代文では「反知性主義とは知性的なものを侮蔑する態度や科学的な根拠に基づかない政策や思想でなく、権威ある知性的なエリートが権力と結びつく『知性主義』、即ち知的な特権階級に対する反発」という意味である。

※これで解説を続けていけるとしたらすごい方だなあ。これを書くのに二時間以上かかったよ。ふぅ。 

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