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kotoba日記                     小久保圭介

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荒野

2017年03月30日 | 生活
荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ

彼は黒いフェルト帽を被って
小さな女の子の手を引いて
ビルの中に消えていった

もう彼はバス停に戻ってこない
あの家に帰ってしまった
ケンタッキーも
もうない
あんなふうに
笑うことはない

荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
僕ら
歩いているうちに

荒野はずっと続き
どれだけこの先
歩いても
荒野は終わらない

彼の苗字が変わってから
僕は十年
時をやり過ごすだけだったよ

荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
あとは干からびて
枯れるだけ

彼は若作りするけど
本当はしわだらけなのさ
僕は禿げあがって
眉毛は白髪なのさ

荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
白い服の女の子
彼は子供を持って
荒野へ来てしまったんだよ

どす黒いこと
たくさんしてきたね
どす黒い思い
たくさんしてきたね

荒野の風に吹かれて
僕ら
荒野へ来てしまったんだよ




彼は言う

2017年03月30日 | 生活
もう一人の彼は言う
「最近、人とすれ違ってしまうんですよ」
誰ともかみ合わぬ
その思い

もともと
私たちはひとりだったのに
しょうがなくて
交流しなければいけない時がある

その時
思うのだ

人と通じない

でも彼は
通じたいと思っているから
すれ違ってしまう感情に
わずか
おろおろする

どのドアを叩いても
門前払い
どのドアを叩いても
居留守

それでも
彼もわたしも
生きていく
孤独なんて
当たり前
それでいい



バス停 空港

2017年03月30日 | 生活
彼はバスターミナルの
椅子に座る

行先の違う
バス停を見まわす

彼はあのバスが
どこへ行くのかを
知っている
あのバスに乗ったら
そう思う

椅子はひんやりとして
彼は手を振る

彼は空港へゆく
あの飛行機が
どこへ行くかを
知っているから
それに乗ったら
と思う
バスも
飛行機も
ほぼ
確実に
目的地に着くのだ
何時間後
彼は降り立つ
その街を歩いてみる

行きたい場所があるのは
本当に幸せだろうか
行けぬ苦しみを差し引いても
実は

幸せなのだ