『芸術の誕生』
その人は泣いていた
涙は流れず
叫びのように泣いていた
1ヶ月 泣いていた
その人は泣いていた
悲しみで苦しみで
寂しく誰にでも
顔を合わせれば
その人は泣いていた
食べることも
座っている時も
大声で泣いて
大声で叫んでいた
誰彼に助けてくれ
誰彼に救済を求めた
それでも
ずっと泣いていた
泣き始めて
時に大声で泣く
風がやんて
泣かない時がある
今朝 その人の前を
通ってみると
二十四色の色鉛筆
誰かに
与えたのかもしれない
色鉛筆で
描いていた
自分はどうしたらいいのか
答を
ください
その人は
誰かにも自分にも
答を求めている
その人の中に
流れている
水の音
その人は
胸の中に聞こえる音に
色鉛筆で
描く
その人はすぐまた
泣くのだけれど
描くときは
静かです
私がまだ絵を見ていない
まだ始めたばかりの心には
たくさんの色がある
その人が半日中
泣いた時は
力があるはず
人がマイナス感情で
泣いたあと
ある時
確実に来る
泣き声は消え
プラス感情が来た時
その人は
本当の力を示すのだ
良くも悪くもどっちでもいい
人は流れの中
芸術によって
生きる糧になって
生きてゆける
たくさんの人と同じ
芸術は
孤独であっても
苦しみであっても
寂しさであっても
侘しさでもあっても
あなたの指に
色鉛筆を繋ぐ
どんな人
みんなでも
私でも
みんな
芸術ができます
泣く人は
みんなに
泣く言葉で
教えてくれます
その色
その形
叫ぶ泣き声は
確実に
芸術に変わって
その人は生きていく
見ていた人に
力を与える
芸術とは
色鉛筆を使うだけではない
息をすること
それが芸術
一点を見ていること
それが 芸術
考えていること
思うこと
手を自分の手を握ること
これが芸術です
話すことも黙ることも
生きていることが 芸術
あなたは
わたしは
あれだけ泣いた力は
同じだけの力で
笑うこともできる
あなたに
出会えてよかった