以前
サウス先生とナマステ先生と三人で
焼き肉を食べにいった
名古屋にあるチェーン店
『あみやき亭』
二人はビールを飲み
肉を食う
わたしはウーロン茶と肉を食う
もうみんないい歳なのに
獣の如く
何人前も頼み
すぐに食べきって
また注文
野菜類はほぼ皆無
肉だらけ
カルビだのタンだのロースだの
未だにどこの部位なのか判らぬ
知っているのは
ホルモンは腸
タンは舌
ともかく塩だれやレモンダレや甘口だれ辛口だれ
ぐちゃぐちゃになり
とにかく焼いて食う
それをずっと続ける
話しながら
けれど基本は肉を食う
飲みながら
けれど基本は肉を食う
肉をひっくり返しながら
基本肉を食う
パットで注文を取りながら
肉を食う
何が何でも肉を食う
たまにエリンギやキャベツやつくねやソーセージを焼く
だがしかし何といっても肉を食う
もういいかな
とビビンバというご飯の上にキムチみたいなものがのった
ご飯を食べ
終了
みんな話しているのだけれど
たいした話ではないので
忘れる
三人で15000円
一人5000円
値段は値段だけど
たまにはいい
とにかく肉がおいしくて
堪能
帰路
ふと「一人焼き肉」なる言葉が浮かんだ
なるほどわたしも「一人焼き肉」に行きたい
行く人たちの気持ちが判る
自分のペースで食べられるし
しかもおいしい
さらにわたしはお酒が飲めないので
もっと安くなるはず
そして今日
台風の帰路
柳原通りの脇に
天下無敵の『あみやき亭』登場
こんなところに
夢の国があるとは知らなかった
今度ぜったい決行しよう
一度も体験していない
「一人焼き肉」
思えば同じ語源で
「一人カラオケ」がある
あれは歌が好きでしょうがない人が一人でたっぷり
誰に気兼ねなくリクエストをして
絶叫または歌い跳ねる
見ているのはモニター越しの店員さんだけ
実は『一人焼き肉』も
カラオケと焼き肉が違うだけ
好きを極める
に尽きる
好きなことを好きな場所で好きな時に一人で堪能する
「あらあの人、一人だわ」
という目線は昨今なくなった
肉を食いたいから食いに来た
それだけ
焼き肉
これほどおいしいものか
この世にあるとは
うかつだった
私は生きながらにして
寝ていたのだ
真に生きること
生きる誠とは何か
人が到達するところとは何か
悟るとは何か
文学とは何か
焼肉の中の焼肉とは何か
台風とは何であろうか
生死とは何か
一瞬とは何か
言葉とは何か
仕事とは何か
理想郷とは何か
超現実とは何か
美とは何か
私たちはどこから来てどこへ行く
深淵とは何か
主義とは何か
その答は
あみやき亭に行けば
わかる
たぶんな
いや待てよ
私はバカだった
あみやき亭に行かずとも
あらゆる真理を体に得ること
それは
あみやき亭に住めばいい
さらに修行を積めば
私自身があみやき亭と化し
永劫回帰のあみやき亭と
成ることこそ
到達である
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