戸籍の名前に読み仮名を記載する来年5月26日施行の改正戸籍法に関し、事務を担う地方自治体に困惑が広がっている。
施行に合わせた全国民への読み仮名通知が近づく中、職員の負担増や必要経費の膨張が見込まれることに不満が噴出。
難読の名前をどこまで許容するかの基準も示されておらず、国に速やかな対応を求める声が相次ぐ。
「国の仕事を地方の自前のお金でやらせる考え方は大間違いだ」。
群馬県市長会会長の清水太田市長は、11月7日の記者会見で怒りをぶちまけた。
改正法施行後、全国の市区町村は住民票に記載された読み仮名を基に通知を作成し、全住民に郵送する。
内容が誤っていれば修正を届け出る必要があるが、施行後1年以内に届け出がなければ通知通りに登録される。
太田市は、通知の印刷と郵送に加え、届け出内容を反映させるためのシステム整備、市民からの問い合わせ用のコールセンター設置など総額約9千万円の経費を見込む。
国の補助は通知関連の約1200万円のみで、大半は市が負担を強いられる見通し。
窓口対応の増加も予想され、職員で賄い切れず業者に依頼せざるを得ないという。
悲痛な叫びは他の自治体からも上がり、11月6日には全国62市でつくる中核市市長会が法務省に要請書を提出。
会長の木幡福島市長は「仮に1割が修正を届け出ると、事務負担は2倍になる」との想定を明かし、補正予算で全額国負担とするよう訴えた。
課題は他にもある。
改正法では、通知とは異なる仮名を希望する際、一般的でない読み方を用いるのであれば、実際の使用を証明する資料を求める。
ただ、ある政令市の担当者は「そもそも一般的とそうでない読み方との線引きが難しいのでは」と不安を隠さない。
証明資料についても、パスポートなどの公的資料であれば問題ないとみられるが、民間団体の会員証の持参も予想され、許容範囲が不明確だという。
法務省は既に「太郎」を「サブロウ」や「ジョージ」とするのは認められないといった例示はしたが、さらに踏み込んだ説明はしていない。
いわゆる「キラキラネーム」をどこまで許容するか、自治体によって判断が分かれる懸念も残り、戸惑いの声も上がる。
法務省は負担軽減のため、当初は通知内容の正誤にかかわらず届け出を求めるとしていた予定を、正しい場合は無理に報告を求めない方針に改めた。
読み方に関する指針を年内に提示できるよう急ぎ、補助金の拡充も検討中だ。
同省の担当者は「国民にも、自治体の方々にも迷いが生じないようにしたい」と話した。