例えば、ある従業員が私傷病により長期間欠勤した場合、本来なら会社は「労務提供不能」を理由としてその者を解雇することも可能であるところ、一定期間を経過すれば再び働くことができるようになる可能性があるなら、その一定期間、解雇を猶予することは、本人にとっても会社にとってもメリットがある。
この「解雇の猶予」というのが、「休職制度」の基本的な意義だ。したがって、休職期間が満了してもなお治癒しなかったら、自動退職となることとしているのが一般的だ。
では、その「治癒」とは、どういう状態を言うのだろうか。
古くは「原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したとき」(千葉地判S60.5.31)など、完全回復が求められており、この判決の文面にならって休職期間満了後の復職条件を定めている会社も少なくなかった。
しかし、その社内規定がまだ有効に現存しているとしても、今日それを文言通りに適用するのはリスクがある。
と言うのも、休職制度を争点とした事件ではなかったが、「現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、(中略)他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解する」(最一判H10.4.9)との判決が出されて以来、裁判所は、完治していなくても軽微な業務に就かせることの現実的可能性を検討するよう、会社に対して求めてきているからだ。
これは、「完治」という概念の無い精神疾患の場合には特に顕著であり、また、障害者雇用を推進しようとする社会の動きも労働者にとっては追い風となっている。
翻って考えてみれば、休職制度は「解雇の猶予」なのだから、休職期間満了時にも、会社には解雇回避義務があると理解するべきだろう。「どうしても本人の労働力に見合った業務が用意できないときに限り復職断念」という手順を踏まなければならないということだ。
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