ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

ストレスチェックを実施することの(会社にとっての)メリットとは

2016-11-23 17:19:02 | 労務情報

 既に多くの会社が実施済だとは思うが、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、毎年1回以上、「ストレスチェック」を行い、結果を労働基準監督署に報告しなければならない(労働安全衛生法第66条の10、労働安全衛生規則第52条の21)。
 この法令は平成27年12月1日から施行されているので、該当する事業場は今年11月30日までに少なくとも1回はストレスチェックを実施しているはずだ。もし未実施の会社があれば、至急手配されたい。

 ところで、ストレスチェックに関しては、コストや労力や情報管理の煩雑さからそのデメリットばかりが取り上げられがちで、「法律で義務づけられたので仕方なく実施した」と感じている会社も多いようだ。
 しかし、せっかく実施するなら、それ以上のメリットを得られるようにしなければ勿体ないではないか。

 では、ストレスチェックを実施するメリットは何か。
 そもそもストレスチェックの目的は「自らの状態を知る」ということだ。ストレスを自覚することで本人のセルフケアを促すきっかけになり、貴重な労働力を失わずに済む可能性が高まるなら、それは会社にとっても大きなメリットと言えるだろう。
 派生的には、従業員が健康を害した(もしくは自らの命を絶った)ことにより会社が訴訟を提起されるリスクも軽減できる。(こちらをストレスチェックの主目的ととらえる向きもあるようだが、あくまで付随効果と考えるべきだろう)

 また、「会社(上司)が従業員(部下)にどのようなストレスを掛けているか」を把握できて、職場環境を改善するための参考資料となる。
 その効果をより上げるために、会社は、職場ごとの集計結果を入手するのが望ましい。ただし、それが10人未満になる場合は原則として該当者全員の同意が無ければ提供されない点には要注意だ。
 さらには、全国的な統計が公表されるのを待たなければならないが、他の会社と比べて自社はストレスが高いのか低いのか、言い換えれば「働きやすい会社」なのかどうか、相対的な位置が分かることもメリットの一つと言える。

 なお、先刻ご承知のことと思うが、“適度なストレス”は生産性向上や業務改善の動機づけにもなるもので、ストレスすべてを悪者扱いするのは失当だ。
 問題は、“過度のストレス”もしくは“自覚できていないストレス”なのであって、ストレスを受ける側(本人)も、ストレスを掛ける側(会社)も、それを知る手段としてストレスチェックの活用を考えるべきだろう。


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「4週4休制」の“後づけ”は許されない

2016-11-13 23:39:41 | 労務情報

 従業員には毎週1日以上の休日を与えなければならないが、これは、4週間を通じて4日以上の休日を与えることとしても良い。(労働基準法第35条)
 とは言うものの、例えば「たまたま今月は月の後半に業務が立て込んでいるので月の前半に固めて休ませて“4週4休”を確保する」というのが労基法違反にならないかと言うと、そんな“後づけ”は許されないのだ。
 「4週4休制」を採用するには、予め「4週間の起算日」を就業規則等で明らかにしておかなければならない(労働基準法施行規則第12条の2第2項)。この規定が無ければ、原則に立ち返って、毎週1回は必ず休ませなければならないことになる。

 もっとも、『休日労働に関する労使協定』(労働基準法第36条に基づく労使協定;『時間外労働に関する労使協定』と併せて俗に『三六協定』と呼ぶ)を締結していれば、その協定に定めた範囲内で休日労働させることは可能である。しかし、その場合は割増賃金(休日労働については35%以上)を支払うべきことは承知しておかなければならない。
 また、就業規則等に「休日を振り替えることがある」と定めていれば、予め別の休日を指定することにより休日に労働させても、その日は「休日労働」とは扱われない。しかし、その場合でも、週40時間(原則)を超える労働については割増賃金(25%以上)が発生する点には注意を要する。

 就業規則等に「4週4休制」についても「休日振替」についても定められておらず、かつ、三六協定も締結されていない、という状態であったら、そもそも(災害等臨時の場合を除いて)休日に労働させること自体が違法となる。
 自分の会社の制度が整っているかどうか、再チェックしておきたい。


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肥満の従業員に対し、会社は何らかの対応をすることができるか

2016-11-03 19:49:52 | 労務情報


 「食欲の秋」そして「天高く馬肥ゆる秋」。
 ところで、「肥満の従業員に対し、会社は何らかの対応をすることができるか」という質問を受けることがある。

 もしかしたら、このような疑問を持つ経営者は「度を越した肥満の従業員を解雇したい」と考えているのかも知れないので、まず、「解雇できるか」について考えることとする。
 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でなければ無効(労働契約法第16条)とされているところ、(海外のことは分からないが)日本では、通常、太っている(または太った)ことは解雇の合理的理由にはなりえない。容姿を重視するような職種に就く者であったなら、会社の立場からは一応は解雇の「合理性」に関しては主張できるとしても、「相当性」に関してまでクリアするのはかなりハードルが高いと言える。会社が配置転換等の解雇回避努力を尽くしたかも問われることになろう。
 しかし、その肥満が労務の提供ができないほどであったなら、話は変わってくる。その場合は、就業規則が定める基準に則って解雇を考えざるを得ないだろう。とは言っても、予め適切な指導と一定の猶予期間(休職制度のある会社では、それの利用も)を与えることが必須であるし、このケースにおいても配置転換による職務軽減等を検討しなければならない。
 いずれにしても、経営者としては、「肥満だけを理由としては解雇できない」と理解しておく必要があるだろう。

 では、肥満の従業員に「やせるように。」と指導することはできるのだろうか。
 これも、そんなに簡単な話ではない。容姿に関して話題にするのはセクシャルハラスメントととられかねないからだ。
 某ファッションブランドの日本法人における「容姿に関する発言を含む嫌がらせがあった」と報道機関に公表したことを理由とした解雇は、裁判所には認められた(東京地判H24.10.26)ものの、ブランドに大きなダメージを受けたことは記憶に新しい。
 従業員への指導に関しては、会社(上司)の主観ではなく、定期健康診断の結果に基づいて、「特定健診」および「保健指導」の受診を事務的に勧めるのが良いだろう。また、一次健診で「血圧」、「血中脂質」、「血糖」、「肥満度」の4項目すべてについて「異常の所見あり」と診断された労働者(脳・心臓疾患の症状を現に有していないものに限る)は、労災保険の「二次健診給付」(現物給付=無料で受診できる)が受けられる。これを使えば本人にも会社にも特段の負担が掛からないので、要件に該当しているなら、活用しない手は無い。

 しかし、そうは言うものの、従業員の健康管理に関しては、事業主もその責任の一端を担っているとの認識も必要だ。
 某大手コンビニチェーンにおいて社長自身がCHO(最高健康責任者)に就任し「肥満の社員の割合を減らす」などの健康対策を打ち出したことも、そうした取り組みの一つとして期待を込めるとともに、従業員の反応を含めた効果の程を注視していたい。


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