多くの企業では、就業規則で、社内での政治活動を禁じている。
就業時間内は従業員には職務専念義務が課されているので当然としても、休憩時間は自由に利用させなければならない(労働基準法第34条第3項)ことから考えれば、この規定は違法ではないのだろうかとの疑問が湧くかも知れない。
結論を先に言えば、社内での政治活動を禁じるのは違法ではない。
その根拠は、「施設管理権」・「社内秩序維持」・「他の従業員の休憩」の3側面から説明できる。(参考判例:最三判S52.12.13)
第1に、会社は、会社施設を管理する権利を有している。政治的な演説や集会を行うにあたって会社の許可を求めさせ、また、無断での演説や集会を中止させることは、施設管理権の正当な行使と言える。
第2に、従業員は社内秩序を維持しなければならない。この義務は、就業時間外であっても免れるものではない。一般に、政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあるため、社内秩序維持の観点から自ずと一定の制約を有すると言える。
第3に、他の従業員も休憩時間を自由利用できるところ、それを妨げ、ひいては休憩後の作業効率を低下させるおそれがある場合には、会社はそのような行為を禁じることが可能だ。
しかし、この3側面を逆にとらえると、会社施設管理に支障が無く、社内秩序を乱すものでもなく、他の従業員の休憩の妨げにもならない行為(例えば、「机の上にビラを置く」程度のもの)であれば、会社がそれを禁じる根拠が揺らいでしまう。それを、就業規則の文言のみに拠って懲戒処分を科すというのは、少し無理がありそうだ。
また、その行為が「労働組合活動」であった場合には(「政治活動」と類似してはいるものの)、それを禁じたり、その禁止命令に反したことを理由として懲戒したりすると、不当労働行為となってしまうケースもありうる。
以上を整理すれば、就業規則に社内での政治活動を禁じる規定を設けること自体は合法であるとしても、それを適用して従業員を懲戒するにあたっては、慎重に考えるべきと言える。
なお、ここでは「政治活動」として考察したが、「宗教活動」や「趣味のサークル等の活動」も、これと同様に考えることができる。
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