ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

個別労働紛争の「あっせん」に会社は応じるべきか

2022-11-23 21:59:12 | 労務情報

 労働局(正確には労働局に設置される紛争解決委員会)や労働委員会から、個別労働紛争に関する「あっせん」手続きの通知が届くことがある。 経営者や人事担当者は面食らって、特に過去こういう経験の無い人はつい感情的な対応をしてしまいがちだが、こういった時こそ冷静な対処が求められる。

 まず、「あっせん」というのは、個別労使紛争(労使間の紛争のうち労働組合を介さないもの)に際して、相手方が、裁判所以外の第三者機関において“話し合い”を求めてきたものだということを正しく理解しておきたい。
 「あっせん」が「訴訟」と最も異なるのは「勝ち負けを決するのでなく互いに譲歩しあう」ことで解決を目指す点だ。 すなわち、相手方は解決後の人間関係を維持したいという気持ちがあるかも知れない(無論そうでないケースも多いが可能性はゼロではない)ことは、考慮に含めておくべきだろう。

 また、あっせんに応じた場合のメリットとして、「公開されない」ことが挙げられる。 つまり、ライバル会社が法廷で傍聴することも、事件の全貌が「判例集」に載ってしまうことも(「いわゆる事件名」に会社名が付されることも含め)、心配する必要が無い…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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カスタマーハラスメントには毅然と対処を

2022-11-13 20:59:09 | 労務情報

 令和2年10月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、過去3年間に従業員から「顧客等からの著しい迷惑行為」に関する相談を受けたとする企業が19.5%に上っている。
 昨年12月に起きた大阪市北区の医療ビル放火事件や今年1月に起きた埼玉県ふじみ野市の訪問診療医射殺事件のようなものは極端な例としても、従業員が身の危険を感じるような悪質クレームも、数字以上に多く発生している印象だ。

 さて、こうした「カスタマーハラスメント」は、加害者は社外の者であるのは明らかだが、これへの対処を一つ間違えると、被害を受けた従業員の矛先が会社へ向いてしまうこともある。 「訪問した児童宅で飼い犬に噛まれて負傷した教諭がその損害賠償に関し児童の家族から土下座での謝罪を求められ、同席していた校長がそれを強要した」として被告の山梨県に損害賠償を命じた裁判例(甲府地判H30.11.13)は、直接的には「パワーハラスメント」が争点であったが、発端はカスタマーハラスメントであった。
 他方、「自動車損害保険契約に関し保険会社に多数回・長時間の電話交渉を繰り返した顧客の行為」を業務妨害として架電差し止め請求を認めた仮処分(東京高決H20.7.1)などは、会社が悪質クレーマーに対し適切に対処できた好事例と言えよう。

 そもそも、会社は、従業員が生命や身体の安全を確保しつつ働けるよう配慮しなければならない(安全配慮義務;労働契約法第5条)。 したがって、カスタマーハラスメントの存在を知った以上、会社は従業員を守るための対処を講じなければならないのだ。

 誤解の無いように念を押しておくが、顧客(または利用者・取引先等)からの正当なクレームは、自社の商品・サービスの品質改善にもつながるもので、これには真摯に向き合うべきである。 しかし、それが「要求内容に妥当性の無いもの」や「要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当でないもの」であったら、それはカスタマーハラスメントに他ならず、従業員の就労環境を害し、ひいては会社の経営に悪影響を及ぼすので、経営者として毅然と対処しなければならない。

 カスタマーハラスメントへの対処に関しては、先ごろ厚生労働省が公開した『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』も参考にしたい。


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会社に不都合な労使慣行を解消するには

2022-11-03 16:59:09 | 労務情報

 就業規則や個別の雇用契約書に記載された内容以外に「労使慣行」が労働条件を構成することがある。
 例えば、「夏季賞与は基本給1か月分、冬季賞与は基本給2か月分を支給する」といった取り扱いが、労使どちらからも異議が唱えられることなく長期間反復継続して行われ、双方の規範意識(特に会社側において相応の権限を有する者が規範意識を持っていたこと)によって支えられていたならば、民法第92条(※)に言う「慣習」(「事実たる慣習」と呼ばれる)が成立していたと見られ、民事上の拘束力を持つことになる(参考判例:最一判H7.3.9、大阪高判H5.6.25等)。
 もちろん、それが強制法規や公序良俗に反しないことが大前提であることは言うまでもない。

※)民法第92条(任意規定と異なる慣習)
 法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

 さて、そのような労使慣行は、すでに労働契約の一部となっているのだから、会社が一方的に取り扱いを変更することは許されない。
 労働条件を変更するには、原則として、労使間の合意が必要だ(労働契約法第8条)。 すなわち、労働組合との間で新たな労働協約を締結するか、個々の労働者から個別の同意書を出させる等の手続きを踏んだうえで、就業規則に変更後の労働条件を明記する必要がある。
 ところが、会社にとって不都合な労使慣行を解消する場合は、それが労働者にとっては不利益になることが多く、そのため、新たな労働条件に同意してくれないケースも多いだろう。 その場合には、労働契約法第10条の定めにより就業規則を変更することとなるが、そのハードルは非常に高いと言える。
 つまり、「会社にとって不都合な労使慣行の解消」は、「労働条件の不利益変更」に他ならないのだ。
 解消できないものでも解消してはならないものでもないが、明文化されていないからと言って、安易に考えてはならない。 労働者に、会社の実情をきちんと伝え、労使慣行の解消(労働条件の変更)に同意してもらえるよう、真摯に話し合う必要があるだろう。

 加えて言えば、労使慣行化するとそれを解消するのは難しくなるので、「就業規則の例外的運用」には、特に慎重を期したいものだ。


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