「執行役員」という役職を置いている会社がある。これは、会社法第418条に定める「執行役」と似た名称ではあるがまったくの別物であり、会社が独自に定めることができるものだ。法令上は会社法第362条にいう「重要な使用人」に該当し、会社とは「雇用関係」(「執行役」と会社とは「委任関係」)にあるものとされる。
したがって、執行役員は、当然「労働者」であり、労働関係諸法令の適用を受けることになる。
具体的には、執行役員であっても、労働基準法による労働者保護規定の対象となり、労災保険・雇用保険に加入することにもなっている。また、労働組合法や労働契約法も適用される。
ただ、通常は、労働基準法第41条にいう「管理監督職」に該当するため、労働時間に関しては労働基準法の適用除外とされる場合が多い。
平成19年に最高裁が「業績不振の会社が『執行役員退職慰労金規程』を不利益に変更したこと」を是認する判決(最二判H19.11.16)を出しているが、これをもって「執行役員が労働者扱いされない場合がある」と理解するのは早計だろう。この事件は、従業員として退職(この時に従業員としての退職金を受給)した後に執行役員に就任したという経緯や、執行役員就任中の報酬額等も勘案しての“事情判決”であったと言え、「規程の不利益変更」(労働契約法第9条に抵触)の部分だけ切り取って解釈するとおかしな話になってしまう。
このように考えてみれば、「執行役員」というのは、法令上の扱いは一般の従業員と何ら変わることがなく、言わば「名誉職」的な意味合いの役職と認識しておいて間違いではないだろう。
しかし、それは必ずしも悪い意味ではなく、例えば、同族経営の会社において経営者と血縁関係の無い従業員が「取締役」に代えて目標にできる最高職位としてモチベーション維持の材料とするなどの活用も可能と考えられる。
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