「24時間サポート体制」を標榜する会社は今でこそ珍しくない。それは必ずしも「24時間営業」でなくても良いわけだが、そういう会社では、社員が交替で深夜の電話当番に就くことが多くなっている。
さて、その“電話当番”は「深夜勤務」なのか、それとも「宿直」なのか? というのが今回のテーマである。
「深夜勤務」であるなら、日中の勤務時間を含めて法定労働時間(原則として1日8時間・1週40時間)以内もしくは「時間外労働に関する労使協定(いわゆるサブロク協定)」に定める時間以内に収めなければならず、労働した分の賃金(法定時間を超える部分については割増賃金)も当然発生する。
一方、「宿直」であるなら、法定労働時間の制限に関係なく(ただし原則として週1回まで)命じることが可能であり、賃金も1日分の3分の1以上を支払えば足りるとされている。
したがって、会社にとっては「深夜勤務」でなく「宿直」として扱えたほうが好都合ではある。しかし、そのためには、労働基準法第41条に定める「断続的労働」として労働基準監督署の許可が必要であり、しかもそれは容易に認められるものではない。
「宿直」としての許可を得るには、原則として通常業務からは解放され「定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備等を目的とするもの」でなくてはならず、「相当の睡眠設備」(すなわち「仮眠できる」こと)も条件とされる。
とは言え、仮眠できるとしても、精神的緊張を持続しなければならないものは認められない。ビル管理会社の仮眠時間を労働時間とした裁判例(最一小H14.2.28判)も参考にしたい。
これらを踏まえて深夜の電話当番を考えれば、「顧客からの電話を受ける頻度が少なく、かつ、精神的緊張度が低い」業務であるならば「宿直」として許可される可能性があるが、そうでなければ「深夜勤務」として扱うことになろう。
結論としては「業態によって扱いが異なる」としか言いようがないが、いずれにしても予め管轄の労働基準監督署に相談しておくのが、いろいろな意味において賢明だろう。
なお、宿直として取り扱う場合であっても、顧客からの依頼等に緊急対応して労働しなければならない事態が発生すれば、その時間については紛う方なく「労働時間」であるので、その点は誤解の無きよう。
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