会社は、従業員に原則として年1回(特定業務(深夜業や暑熱・寒冷・異常気圧・騒音等に晒される業務等)に従事する者には年2回)以上の健康診断を受けさせなければならず、かつ、その結果を記録しておかなければならない(労働安全衛生法第66条・第66条の3、労働安全衛生規則第44条・第45条)。
そして、この結果を記録しておく義務は、個人情報保護法第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当するため、会社は本人の同意を得なくても健康診断を実施した医療機関から健康診断結果の提供を受けることができる。
とは言うものの、労使トラブル防止の観点からは、事前にその旨を本人に知らせておくのが無難であるし、もし本人が拒んだら無理強いするべきではないだろう。
ところで、会社の持つ従業員の健康診断結果について、医療保険者(健康保険協会・健康保険組合・市区町村等)から提供を求められることがある。 こういった請求に対して、本人の同意が得られないからと言って提供を拒否する会社もあると聞くが、同意の有無にかかわらず提供義務が課せられるケースもあることには要注意だ。
それは、40歳以上の従業員に係る特定健康診査・特定保健指導(いわゆるメタボ健診・メタボ指導)のデータを求められた場合だ。 この場合には、会社はこれらのデータを医療保険者に提供しなければならない(高齢者医療確保法第27条第3項)。
経営者や人事担当者にはなじみの薄い法律に定められているためか、この義務についての認知度は低いが、法律で定められている義務であるので、本人の同意を得る必要は無い。
もっとも、このケースにおいても、医療保険者にデータを提供する旨を本人に知らせておくのが望ましいには違いない。
国は今、マイナポータルを活用して、特定健診データを医療機関が閲覧できるようにするシステムを(令和3年3月から順次)稼働させつつある。 このことに関しても周知不足(行政の不作為)の感が否めないが、折を見てこのことを従業員に伝えておくのも会社の役割と言えるのではなかろうか。
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