新型コロナ禍の渦中にあってあまり話題に上っていなかったが、第201回通常国会において「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が可決・成立し、令和2年6月5日に公布されている。
今般の年金制度改正は、次の4点を大きな柱としている。
1.被用者保険の適用範囲を拡大する (詳細は後述)
2.在職老齢年金の支給停止額を47万円に統一し、支給額を毎年改定する
3.老齢年金受給開始時期を75歳まで繰り下げ可能とする(現行は70歳まで)
4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
さて、1点目の「被用者保険の適用範囲拡大」の諸施策中には、「個人事業」や「国・地方公共団体等」に関するものも含まれているが、民間企業に最も影響を与えそうなのは、何と言っても「短時間労働者への適用拡大」だろう。
短時間労働者(労働時間が一般就労者の4分の3未満の者)は、現行制度では、以下の5要件を満たした場合に、健康保険および厚生年金保険の被保険者となることになっている。
(1) 常時500人を超える被保険者を雇用する企業(または労使間で社会保険加入の同意が得られている500人以下の企業もしくは国・地方公共団体)に勤務している
(2) 1年以上の雇用が見込まれる
(3) 賃金の月額が8万8千円以上
(4) 所定労働時間が週20時間以上
(5) 学生でない
これらのうち(1)の「500人を超える」について、今般の法改正で、令和4年10月からは「100人を超える」に、令和6年10月からは「50人を超える」に、対象を拡大することとされた。
また、(2)の要件は撤廃され、一般就労者と同様(原則として2か月を超える雇用)となる。なお、(3)・(4)・(5)は、今回は「現状維持」とされた。
【参照】 厚生労働省>「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の概要」
→ https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf
各企業では、「同一労働同一賃金」(大企業は令和2年4月より施行済;中小企業は令和3年4月より施行)に加えてこの改正があり、パートタイマーの雇い方や業務配分について組み立て直さなければならなくなったと言える。
必ずしも月給制にする必要はないし、短時間労働であるがゆえに負うべき責任の重さが正規職員と異なることには問題がないが、少なくとも、「安価な労働力」としてパートタイマーを雇うことはできなくなったと考えるべきだろう。
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