育児休業は、その名の通り子を養育するための休業であるが、昨年1月から改正施行された育児介護休業法により、その「子」の範囲は、従来の「実子および養子」に加え、「特別養子縁組の監護期間中の子」・「養子縁組里親に委託されている子」・「その他これらに準じる者」まで拡大されている。
まず、2つめの「養子縁組里親」について概要を説明すると、里親制度は原則的には法律上の親子関係が生じないところ、児童を養育する者(里親)が養子縁組を希望し、それに実父母が同意している場合に、「養子縁組里親」となるものだ。また、3つめの「その他これらに準じる者」は、それと類似のケースであるが、実父母が同意しないため養子縁組里親として委託できない場合の里子とされている(同法施行規則第1条第1項)。
もっとも、養子縁組里親となるには都道府県知事が実施する研修を修了し、養子縁組里親名簿に登録しなければならず(児童福祉法第6条の4第2号)、また、養子縁組里親制度により委託されている児童自体、全国で200人ほど(平成28年度末;18歳未満の全年齢合計)しかいない。したがって、会社の人事担当者としては、予めこれに備えておくよりも、自社の従業員でこれに該当する者が現れた時に、行政機関と相談しながら対処していくのが、実務上、効率的と言えそうだ。
さて、今般の法改正で追加された3項目のうち、自社で発生する可能性があるとしたら、1つめの「特別養子縁組の監護期間中の子」だろう。
「特別養子縁組」は、「普通養子縁組」と異なり、実父母との親子関係が終了し、戸籍上も、実子と同様に記載される。これは、養親からの請求に基づき、家庭裁判所が決定するもので、その決定にあたっては、6か月以上の監護期間を考慮することとなっている。この監護期間中は、寝食を共にしていても未入籍であるため“子”ではないが、実質的に“育児”を行っているのだから、育児休業等の対象とすることとされたものだ。
特別養子縁組は、現状、年間600例ほど成立している(平成28年度司法統計より)が、今年4月から施行された「特別養子縁組あっせん法(民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律)」により、今後の増加が見込まれている。厚生労働省によれば要保護児童(実親からの虐待等により保護の対象となっている児童)は平成25年時点で30000人近く(全年齢合計)に上っているので、民間あっせんによる児童保護への期待が高まっているところだ。
実際これで特別養子縁組がどのくらい増えていくかは不透明だが、従業員の中には、この制度を利用しようと考える者がいるかも知れない。その場合、突然(妊娠期間を経ずに)育児休業や育児短時間制度を請求することになり、しかも、年配の従業員も利用する可能性があることを、経営者や人事担当者は想定しておく必要がある。
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