ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

直行直帰が「事業場外みなし」とは限らない

2023-05-23 13:46:25 | 労務情報

 外回りの営業マンや居宅介護サービスに従事するホームヘルパーなど、始業時に出社することなく勤務場所に直接出向き(直行)、または、終業後に帰社することなく自宅へ直接帰る(直帰)という勤務形態がある。こういう従業員の労働時間はどのようにとらえるべきか。

 労働基準法第38条の2は、「労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間(もしくは“通常必要とされる時間”または“労使協定で定めた時間”)労働したものとみなす」と定めている。
 これは一見すると「事業場外労働=みなし労働時間制」と読み取れそうだが、条文中「労働時間を算定し難いときは」の部分には注意を要する。すなわち、「労働時間を把握する」のが原則であり、それが難しいときに限り“みなし労働時間制”が適用されるという、言わば例外規定なのだ。

 分かりやすい例として…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「機密の事務を取り扱う者」とは

2023-05-13 11:25:33 | 労務情報


 労働基準法第41条第2号には、労働時間等に関する規定を適用しない労働者として「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」が挙げられている。
 前者の「管理監督者」に関しては、トラブルになる事案が多く、それゆえ判例も積みあがっているが、後者の「機密の事務を取り扱う者」に関しては、判例の蓄積も無く、これに該当するか否かを迷うケースも多いのではなかろうか。

 これについては、労働省(当時)事務次官から「機密の事務を取り扱う者とは秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であつて、出社退社等についての厳格な制限を受けない者であること。」(昭22.9.13発基第17号)との行政通達が発出されている。
 この通達文中には代表例として「秘書」が挙げられているが、名称にとらわれず、その職務や勤務態様によって判断されることになる。
 したがって、「秘書」と称していたとしても、例えばその者が単なる文書ファイリングに従事するのみであれば、「職務が経営者や管理監督者の活動と一体不可分」にも「出社退社等についての厳格な制限を受けない」にも当たらず、「機密の事務を取り扱う者」には該当しない。
 同様に、「人事部員」や「経理部員」であっても、その者の所属部門だけをもってこれに該当すると決まるものでもない。
 他方、例えば「役員付き運転手」のような者であっても、その職務や勤務態様によっては「機密の事務を取り扱う者」に該当するケースもありうる。

 そして、「機密の事務を取り扱う者」は労働時間等に関する規定を適用しないとは言っても、深夜労働に関する規定(労働基準法第37条第4項、同法第61条)および年次有給休暇に関する規定(同法第39条)は適用される。 また、会社は安全配慮義務(労働契約法第5条)も果たさなければならない。
 そのため、労働時間管理がまったく不要になるわけではないことに注意したい。

 ところで、労働組合法第2条第1号には、労働組合に参加させられない「使用者の利益を代表する者」という類似の概念が存在しており、経営者の一部にはそれを「機密の事務を取り扱う者」と混同している向きもある。
 確かにこの両者は概ね一致するものの、中には、労働時間管理になじまないとは言えない者(機密ではない事務を取り扱う人事部員や経理部員など)も含まれるので、必ずしもイコールではない点に留意したい。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

従業員を他社の“役員”として出向させたら労災は?

2023-05-03 14:27:06 | 労務情報

 会社の役員(取締役・監査役等)は、業務中に負傷しても、原則として労働者災害補償保険(以下、「労災保険」と略す)で補償されない。
 従業員兼務役員であれば労働者としての業務にも従事しているのでその部分については労災保険が適用されるが、従業員身分を兼務しない役員は労働者ではないので労働者を保護するための法令が適用されないのは当然ではある。
 会社役員でも労災保険に加入できる「第1種特別加入」という制度はあるものの、その対象は中小事業主(※)に限られる。
  ※中小事業主と認められる企業規模
    a)金融業・保険業・不動産業・小売業 …  50人以下
    b)卸売業・サービス業        … 100人以下
    c)その他              … 300人以下

 さて、これを踏まえたうえで、自社の従業員を他社(多くはグループ会社)の役員として出向させるケースについて考えてみることにする。

 出向先で役員に就任する場合、労災保険は適用されない。 役員として出向しながら出向先の従業員を兼務することは(違法ではないし可能性がゼロでもないが)ごく稀なケースなので、ここでは考えないこととする。
 ちなみに、雇用保険に関しては出向元で(従業員として)賃金を支払う場合は出向元の労働者として雇用保険の被保険者となるが、労災保険に関しては賃金の支払い者にかかわらず“出向先”での適用となるところ、出向先においては労働者ではないので被保険者とならないのだ。

 出向先が中小事業主に該当するなら上に挙げた「第1種特別加入」を考えてもよいが、「労働保険事務組合に事務委託しなければならない」等の要件があり、それは出向先の労務管理を変えることにもなるので、メリット・デメリットを慎重に検討してから結論を出すべきだろう。
 もちろん、民間保険会社の生命保険・傷害保険等を掛けておくのも有効な策となりうる。 しかし、国が管掌している労災保険と比較すると、納付する保険料と補償される給付内容の費用対効果面でどうしても見劣りしてしまう。 また、「労災上乗せ保険」も労災保険で補償されない事故はカバーしないので、その点にも注意したい。

 そうは言うものの、「労災保険の対象とならないから出向先で役員にさせない」というのは、本末転倒だ。
 これは自社内で役員に就任させるケースでも同じだが、身分や役割を決めるのが優先であるべきであって、労災保険の対象から外れるか否かは“参考程度”に考慮するべきものと言えよう。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする