労働基準法第41条第2号には、労働時間等に関する規定を適用しない労働者として「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」が挙げられている。
前者の「管理監督者」に関しては、トラブルになる事案が多く、それゆえ判例も積みあがっているが、後者の「機密の事務を取り扱う者」に関しては、判例の蓄積も無く、これに該当するか否かを迷うケースも多いのではなかろうか。
これについては、労働省(当時)事務次官から「機密の事務を取り扱う者とは秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であつて、出社退社等についての厳格な制限を受けない者であること。」(昭22.9.13発基第17号)との行政通達が発出されている。
この通達文中には代表例として「秘書」が挙げられているが、名称にとらわれず、その職務や勤務態様によって判断されることになる。
したがって、「秘書」と称していたとしても、例えばその者が単なる文書ファイリングに従事するのみであれば、「職務が経営者や管理監督者の活動と一体不可分」にも「出社退社等についての厳格な制限を受けない」にも当たらず、「機密の事務を取り扱う者」には該当しない。
同様に、「人事部員」や「経理部員」であっても、その者の所属部門だけをもってこれに該当すると決まるものでもない。
他方、例えば「役員付き運転手」のような者であっても、その職務や勤務態様によっては「機密の事務を取り扱う者」に該当するケースもありうる。
そして、「機密の事務を取り扱う者」は労働時間等に関する規定を適用しないとは言っても、深夜労働に関する規定(労働基準法第37条第4項、同法第61条)および年次有給休暇に関する規定(同法第39条)は適用される。 また、会社は安全配慮義務(労働契約法第5条)も果たさなければならない。
そのため、労働時間管理がまったく不要になるわけではないことに注意したい。
ところで、労働組合法第2条第1号には、労働組合に参加させられない「使用者の利益を代表する者」という類似の概念が存在しており、経営者の一部にはそれを「機密の事務を取り扱う者」と混同している向きもある。
確かにこの両者は概ね一致するものの、中には、労働時間管理になじまないとは言えない者(機密ではない事務を取り扱う人事部員や経理部員など)も含まれるので、必ずしもイコールではない点に留意したい。
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