従業員の能力開発のために各種の研修メニューを用意している会社は多い。しかし、従業員の中には研修を受けるだけ受けたらすぐに転職してしまう者もいて、経営者の頭を悩ませている。
そうした事態を防ぐため、「研修受講後一定期間内に退職する者には研修に掛かった費用を返還させる」旨を取り決めておく会社もあるが、これには法令上の問題は無いのだろうか。
裁判例を見ると、美容室の従業員に美容指導を受けさせたケース(浦和地S61.5.30判)、会社の海外留学規程により留学先を選択し、帰国後に留学で習得した技能を生かした職務に従事させたケース(東京地H10.9.25判)等、その研修が社員教育の一環として行われたものは、使用者として当然なすべきものとして、要した費用の返還を求めることは違法と断じている。
一方で、従業員からの申し入れにより技量資格検定試験受験のために実施した社内技能者訓練について、その費用を「立替金」と位置付け(大阪地S43.2.28判)、また、社内公募により海外留学させ、一定期間内に退職した場合には掛かった費用を返還させる旨を就業規則に定めてあったものを「返還債務免除特約付きの貸付金」として(東京地H9.5.26判)、いずれも労働契約とは区別して労働基準法第16条が禁じる「違約金」には該当しないとした裁判例も存在する。
概して見れば、次のような要件に該当する場合は、労働基準法に違反しないと判断されているようだ。
1.労働者本人が希望した研修であること
2.費用を返済すべきことについて予め労働者が認識していたこと
3.費用返済の取り決めが雇用関係の継続を不当に強要するものでないこと
ただ、現実には、ケースバイケースで判断するしかないので、これを鵜呑みにされないよう。
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