ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

パートの解雇は平均賃金の計算方法に要注意

2017-05-23 13:59:17 | 労務情報

 本人の適性や経営上の都合など事情は様々であろうが、従業員を解雇しなければならないこともあるだろう。
 従業員を解雇するには、30日前までに解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払うものとされている(労働基準法第20条)。そんな事ぐらい、賢明なる読者諸氏には今さら説明するまでもないとは思うが、この規定は、パートタイマーやアルバイトにも適用されることは承知しておられるだろうか。
 「そんな事だって解っている」という方。では、彼らについては解雇予告手当の計算方法が正社員とは異なる場合もありうることはご存じだろうか。
 労働法を勉強された方でも、ここまでは知らなかったり、あるいは知っていてもうっかり月給制の者と同様の計算をしてしまう例が見受けられるので、ここで再確認しておきたい。

 労働基準法第12条第1項ただし書き第1号では、時給制や日給制の従業員については、平均賃金は「直近3ヶ月間の賃金総額÷実労働日数」の6割を下回ってはならないことを定めている。
 したがって、月あたりの労働日数が概ね18日に満たない者には、通常の30日分の賃金よりも多額の解雇予告手当を支払わなければならない計算となるのだ。
 この点をしっかり理解し、実務上も失念しないようしておく必要がある。

 昨今では、解雇後しばらく経って(会社の担当者も忘れたころ)、解雇予告手当を請求してくるケースも増えていると言う。
 そもそも解雇自体できれば回避すべきではあるが、不幸にして従業員を解雇せざるを得ない場合には、正しい手続きを踏んでおかないと後から大きなしっぺ返しを食らうことがあるので、充分に注意したいものだ。


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始末書の提出を強制できるか

2017-05-13 10:09:02 | 労務情報

 業務上のミスや不祥事(本稿ではこれらを「事故」と呼ぶこととする)を起こした従業員に始末書を提出させることとしている会社がある。
 「始末書」は、第一には本人の反省を促して事故の再発を防止することを目的としているほか、将来この従業員を解雇する場合において当該事故を自らの責任であると認めた証拠ともなりうるので、始末書を提出させることは、労務管理上、推奨されてもいる。

 しかし、本人が始末書提出を拒んだ場合には、会社(上司)がそれを強制することは許されない。というのも、「始末書」とは「過ちをわびるために、事情を記して関係者に提出する書類」(デジタル大辞泉)であるので、本人の意思に反して始末書を書かせるのは日本国憲法第19条(思想および良心の自由)に反すると解されているからだ。
 こうした場合、上司としては、「始末書」でなく、「業務報告書」や「顛末書」といった書面を提出させることを考えたい。それらには“反省”を込める必要が無く、また、事故の詳細について報告を求めることは上司としての正当な職務命令であるので、当該従業員はこれに従う義務がある。

 一方、懲戒(または制裁)処分の一形態として「譴責」を設け、始末書を提出させることとしている会社もあるだろう。その規定自体は、当該従業員に責任があるのが明らかであるなら、職場の規律を守るために有効と言える。
 しかし、この場合でも本人が始末書提出を拒んでいるなら、やはり内心の問題であるので懲戒処分とは言え「反省している」旨を無理やり書かせることはできない。
 また、始末書を提出しなかったことを理由として他の懲戒処分を科すことも、裁判所の判断はこれを肯定するもの(福岡地判H7.9.20、東京高判H14.9.30等)と否定するもの(大阪高判S53.10.27、神戸地尼崎支判S58.3.17等)とが混在していて、リスクが高い。
 ただ、これらの裁判例を総じてみれば、裁判所は、「始末書提出の拒否」そのものよりも、原因となった事故の重大性を鑑みて「その処分(多くは懲戒解雇や諭旨解雇)が相当であるか」あるいは「そもそも始末書を提出させるほどの不祥事であったか」により判断している傾向がある。 つまりは、ケースバイケースで判断するしかないのだが、懲戒処分すべてに共通して言えるとおり、行為と処分とのバランスを取らなければならないのは確かだろう。

 なお、始末書を提出したか否かにかかわらず、会社としては、その事故を人事考課の考慮材料とし、また、譴責処分を科した旨を社内履歴に残すことは、もちろん可能だ。


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部下が発した「ケチな飲み屋」サインに要注意!

2017-05-03 14:49:15 | 労務情報

 連休が明けるころ、本来の調子を出せていない部下がいたら、要注意だ。「休みボケ」とか「五月病」などと冗談めかして言っているうちは良いのだが、長く続くようであれば「うつ」の疑いもある。

 鈴木安名医学博士が2006年に「うつ」の兆候として提唱した「ケチな飲み屋」という語呂合わせは、覚えやすくて実用的なので、参考にしたい。
  「け」=欠勤(特に休み明けの欠勤)
  「ち」=遅刻・早退
  「な」=泣き言を言う
  「の」=能率の低下
  「み」=ミス(特にケアレスミス)
  「や」=辞めたいと言い出す
 自分の部下が、このような明らかに従来とは違った行動(働き方)をするようになったら、折を見て医師の診断を受けさせる等の配慮が必要だ。ただ部下の尻を叩くだけではなく、総合的な見地から生産性を上げるべく考えて行動することこそ管理職の役割ではなかろうか。

 すべての疾病に共通する話だが、早期発見によって、重篤にならないうちに治療すれば回復も早い。
 また、早い段階で対処していれば、万が一、会社の健康配慮義務違反を問う訴訟が提起された場合でも、会社としては最善を尽くしたとの抗弁もできよう。

 「従業員の健康を守る」ことは、2つの意味(“生産性の維持”と“訴訟への対応”)で「企業を守る」ことにも通じると理解しておきたい。


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