ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

すべての業種に影響するトラックドライバーの働き方改革

2019-10-23 10:29:13 | 労務情報

 現在、国土交通省・厚生労働省等が中心となって、トラック運送事業に従事するドライバーの「働き方改革」が進められている。これは、トラックドライバー不足が深刻化していることを背景に、長時間労働の是正等およびコンプライアンスの確保を目的としたものだ。
 この動きは、一見、トラック運送事業という特定の事業分野だけの問題だと思われがちだが、さにあらず、他の業種にも影響する。
 というのも、昨年12月に改正された貨物自動車運送事業法は、“荷主”に対しても、必要な配慮を求める責務規定を設けたからだ。
 ちなみに、この改正法は、トラック運送事業者に関連する部分は今年11月1日から施行されるが、荷主に関連する部分は7月1日からすでに施行されている。

 国土交通省では「荷主の理解・協力による長年の商慣習の見直し」を重要なテーマと位置づけている。
 具体的には、国土交通大臣は、「違反原因行為」(トラック運送事業者の法令違反の原因となるおそれのある行為)(※)をしている疑いのある荷主に対して、荷主を所管する省庁等と連携して、「トラック運送事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要である」ことについて理解を求める「働きかけ」を行うこととしている。また、違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由がある場合等には、「協力要請」や「勧告・社名公表」を行うこととし、さらには、これら荷主の行為について独占禁止法違反の疑いがある場合には、公正取引委員会に通知することともしている。

※「違反原因行為」とは、荷主による次のような行為をいう(例示)。
  (1) 荷待ち時間の恒常的な発生
  (2) 非合理な到着時刻の設定
  (3) 重量違反等となるような依頼

 従来から「荷主勧告制度」というものは存在したが、それは、トラック運送事業者が現に違反行為を起こした後に発動されるものだった。
 新たな制度では、違反行為が生じる“おそれ”のある段階で荷主に対して改善への「働きかけ」が行えるようになり、荷主としても、「協力要請」や「勧告・社名公表」(一種の罰則)へ至る前の段階で改善策を講じることができるようになったのが、特徴的と言える。

 ここでいう「荷主」には、建設業者や流通関係業者はもとより、宅配便や貨物軽自動車運送事業を利用する者すべてが含まれるので、普通に事業を営んでいるなら、これに該当しない方が少ないだろう。
 「トラックドライバー」と聞いて、自社と無関係だと思い込んで思わぬコンプライアンス違反を問われないように気を付けたい。


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都内でインフルエンザの流行始まる。企業の対応は?

2019-10-13 20:59:03 | 労務情報

 ラグビー観戦のためか、おそらく南半球から持ち込まれたと思われるインフルエンザが、今、東京都内で流行しているらしい。

東京都 > 都内でインフルエンザの流行開始
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/09/26/21.html

 ※一部に「大流行」とか「早くも流行期に」などと書いているサイトも見受けられるが、現時点で「“大”流行」とは言えず、この流行が今後も続くのか(11月ごろいったん収束するのか)不透明な状態であるので、いたずらに人心を不安に陥れるだけの大袈裟な表現は(特に「専門家」を称する人たちは)避けるべきではなかろうか。

 ところで、インフルエンザの流行に関して、企業経営者としてはどのような対策を講じるべきだろうか。
 それには、厚生労働省が取りまとめた『事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン』が参考になりそうだ。

厚生労働省 > 事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-11.pdf

 これは、「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」が平成21年2月17日にまとめた『新型インフルエンザ対策ガイドライン』の一部であるが、新型インフルエンザばかりでなく、(通常の)季節性インフルエンザや、もっと言えば感染症全般について、企業が打つべき策の示唆に富んでいる。
 簡単な例を挙げると、「職場を常に清掃し清潔を保つこと」や「従業員や家族の感染状況を報告させること」といった対策は、すぐにでも取り組めそうだし、取り組むべきだろう。また、「緊急時の連絡体制を整備しておくこと」等も、重要かつ様々な場面で活用できるものだ。

 さらにこのガイドラインでは、パンデミック(爆発的流行)期に到ると従業員の最大4割が10日間程度欠勤する事態が想定されるため、人員不足を見越した行動計画を立てておくことも事業者に求め、「スプリットチーム制(複数班による交替勤務)」や「経営トップの交替勤務」等、いくつかの具体策を提案している。
 いざ緊急時に、事業活動が(縮小するのはやむを得ないとしても)完全に麻痺してしまうことだけは避けたいので、自社に適した対策案を平時のうちから検討しておきたい。

 とかく日本人は危機意識が低いと言われるが、インフルエンザへの対応のみならず「緊急時の対処」について、また、代替要員を確保するための「人材の育成」という点においても、自社の体制を整備しておくべきだろう。


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今、社員寮が見直されている?

2019-10-03 08:19:07 | 労務情報

 昨今の売り手市場を反映してか、一部の企業には社員寮を充実させてリクルーティングの武器にしようという動きが見られる。
 1990年以降、バブル崩壊・景気低迷を受けて社員寮は縮小傾向にあったが、それがここへ来て見直されているのだ。

 ただし、社員寮を有することには、メリットもあればデメリットもある。

【主なメリット】
  (1) 賃金の一部を補填する性格を持つ
  (2) セキュリティ面で安心感を与えられる
  (3) 緊急事態(急病や負傷)に際して寮生同士が助け合える
  (4) 新卒(特に地方出身学生)採用活動に有利な材料となる
  (5) 会社への帰属意識を高められる

【主なデメリット】
  (1) 維持コストがかかる
  (2) 私生活への干渉が、寮生にとっては煩わしく、会社にとっても負担となる
  (3) 寮内の人間関係を仕事に持ち込むことがある(これはメリットでもある)
  (4) 退寮に際してトラブルが生じるケースがある
  (5) 入寮できる者とできない者との間に不公平感が生じる
  (6) 廃止するのが難しい
 デメリット(6)に関しては、特に社員寮を自社で所有している場合、他の用途に転用して有効活用したくてもなかなかできないもどかしさを、会社は感じるかも知れない。

 ちなみに、社員寮を廃止する場合、当然、寮生には退寮してもらうことになる。
 それは労働条件の不利益変更に他ならないので、該当者を説得して退寮に同意してもらう(同意書等の書面に残す)ことを第一に考えたい。代替措置(明け渡しの猶予、引越し費用の会社負担、当面の住宅手当支給等)を用意する必要もあるだろう。
 そして、これに応じない寮生に対しては、就業規則の変更による不利益変更(労働契約法第10条)に踏み切るしかないが、訴訟に発展した場合に裁判所がどう判断するか、リスクがある。

 福利厚生制度すべてに共通する話ではあるが、制度や設備を導入するよりも、それらを廃止するのは、より多くの労力と費用と時間を要する。
 そういった点も踏まえて、「リクルーティングに有利」という理由だけで安易に社員寮の設置に飛びつくことのないようにしたい。


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