現在、国土交通省・厚生労働省等が中心となって、トラック運送事業に従事するドライバーの「働き方改革」が進められている。これは、トラックドライバー不足が深刻化していることを背景に、長時間労働の是正等およびコンプライアンスの確保を目的としたものだ。
この動きは、一見、トラック運送事業という特定の事業分野だけの問題だと思われがちだが、さにあらず、他の業種にも影響する。
というのも、昨年12月に改正された貨物自動車運送事業法は、“荷主”に対しても、必要な配慮を求める責務規定を設けたからだ。
ちなみに、この改正法は、トラック運送事業者に関連する部分は今年11月1日から施行されるが、荷主に関連する部分は7月1日からすでに施行されている。
国土交通省では「荷主の理解・協力による長年の商慣習の見直し」を重要なテーマと位置づけている。
具体的には、国土交通大臣は、「違反原因行為」(トラック運送事業者の法令違反の原因となるおそれのある行為)(※)をしている疑いのある荷主に対して、荷主を所管する省庁等と連携して、「トラック運送事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要である」ことについて理解を求める「働きかけ」を行うこととしている。また、違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由がある場合等には、「協力要請」や「勧告・社名公表」を行うこととし、さらには、これら荷主の行為について独占禁止法違反の疑いがある場合には、公正取引委員会に通知することともしている。
※「違反原因行為」とは、荷主による次のような行為をいう(例示)。
(1) 荷待ち時間の恒常的な発生
(2) 非合理な到着時刻の設定
(3) 重量違反等となるような依頼
従来から「荷主勧告制度」というものは存在したが、それは、トラック運送事業者が現に違反行為を起こした後に発動されるものだった。
新たな制度では、違反行為が生じる“おそれ”のある段階で荷主に対して改善への「働きかけ」が行えるようになり、荷主としても、「協力要請」や「勧告・社名公表」(一種の罰則)へ至る前の段階で改善策を講じることができるようになったのが、特徴的と言える。
ここでいう「荷主」には、建設業者や流通関係業者はもとより、宅配便や貨物軽自動車運送事業を利用する者すべてが含まれるので、普通に事業を営んでいるなら、これに該当しない方が少ないだろう。
「トラックドライバー」と聞いて、自社と無関係だと思い込んで思わぬコンプライアンス違反を問われないように気を付けたい。
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