自社の従業員が他社の役員に就任していることがある。無論これが会社が命じたものであれば(後述の税務処理・社会保険手続きは必要であるものの)特段の問題は無いが、会社の業務とは関係ない私的なものであった場合、会社がそれを認めて良いのかどうかは悩ましい。
まず、他社の役員に就任したときにその旨を会社に届けさせることは、社内規程に必ず定めておくべきだ。
それによって源泉所得税の課税方法が変わる可能性があるし、当該他社でも社会保険に加入する場合は「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」(複写用紙)の提出と保険料按分の手続きを要することになるからだ。
では、従業員が他社の役員に就任した旨の届け出を会社が受け取った場合に、それを認めないというのは許されるのだろうか。もちろん会社が「あちら(他社側)の役員を退任せよ」と強制することはできないので、自社側でそれを理由に当該従業員を解雇することが可能かどうか、という議論になる。
ちなみに、従業員でなく自社の役員である場合は、他社役員の兼任を理由に解任するもしないも株主の総意(株主総会の決議)によるので、これは従業員に限っての問題と言える。
結論としては、「他社役員への就任によって会社の業務に支障が出るかどうか」が判断の分かれ目となる。
それが競合他社であった場合はもとより、十全な労務の提供ができない、業務命令(配転命令を含む)に従わない、会社の信用を失墜させる等の行為が見られたなら、解雇も視野に入れて処分しなければならないが、そうでない限りは、他社役員就任の事実だけをもって懲戒その他の不利益処分を科すことはできないと考えるべきだ。
むしろ今日的には、私生活を含めた従業員の多様性を会社は受け容れるべきとする「ダイバーシティ」の理念を鑑みれば、会社への届け出を徹底することを前提に、条件付きで他社役員への就任を是認していくのが賢明と言えるかも知れない。
今後、マイナンバー制度が本格稼働するに連れ、こういったケースが明るみに出てくる可能性が高いと思われる。会社としては、感情的にならずに、会社にとってのメリットとデメリットを見極めて、冷静に判断したい。
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