新型コロナウイルス感染症(というより感染拡大防止策)の影響で、経営に深刻なダメージを受けている会社は多いだろう。そして、その中には、従業員の減員を考えるべき状況にまで追い込まれている会社もあることと思う。
しかし、そういう会社であっても、少なくとも「雇用調整助成金」の支給要件が緩和されている令和2年12月31日までは、助成金を受給しながら雇用を維持するのが、正しい経営者の姿と言えるだろう。
さて、この事態が収束しても経営状況が元に戻らない場合には、その時こそ、従業員をどう減員するかを検討しなければならない。
とは言っても、「整理解雇」は最後の手段であるので、その前に、諸経費削減(役員報酬の減額を含む)、従業員の配置転換(他社への出向を含む)、希望退職の募集等、各種の解雇回避措置を講じる必要がある。
加えて、これらと併用して「退職勧奨」を行うことも考えたい。
「退職勧奨」は、「解雇」とは異なり、解雇予告手当の支払い(労働基準法第20条)は不要であるし、労災休業中の者や産休中の者(いずれも労働基準法第19条で解雇が制限されている)にすることも許される。
また、「職務遂行能力が低い者」など解雇の事由にはあてはまらない者を対象者としても、法的に問題は無い。
そして、何より、本人が退職に同意した以上、後のトラブルに発展しにくくなるというのが最大のメリットと言える。
しかし、退職勧奨にも次のようなデメリットがある。
まず、雇用保険の離職事由は「会社都合」として扱われることだ。上述した雇用調整助成金も会社都合離職があった場合は助成率が下がる仕組みとなっているし、助成金によっては一定期間中に会社都合離職があると受給要件を満たさないものもあるので、要注意だ。
また、懲戒解雇すべき事由がある場合には、退職勧奨によって合意退職させると「懲戒」の意味合いが薄れてしまう。本人に非があるなら、その責任は負わせるべきだ。
さらに、退職勧奨自体がトラブルになるケースもある。 労働者を騙して“自己都合”での退職願を書かせたり(詐欺)、応諾を無理強いしたり(強要)するのは論外としても、ハラスメントのある職場であったり、労働条件の不利益変更と同時に提案したりすると、退職勧奨に応じたのが本心ではないとみなされるリスクがある。
退職勧奨は、その字が示すとおり“退職の勧奨”であるのでそれを会社が強要してはならないことを肝に銘じたうえで、上手に活用するべきだろう。
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