ご苦労さん労務やっぱり

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執行役員を解任する際の注意点

2024-02-03 08:59:11 | 労務情報

 「執行役員」という機関を設けている会社がある。 これは法令上の用語ではなく(会社法第418条に定める「執行役」と混同されがちだがまったくの別物だ)、言わば「名誉職」的な意味合いの役職と認識しておいても間違いではないだろう。
 一般的に、執行役員は「労働者」であり、労働関係諸法令の適用を受ける。 具体的には、労働基準法による労働者保護規定の対象となり(ただし、通常は同法第41条にいう「管理監督職」に該当し労働時間に関しては適用除外とされる場合が多い)、労災保険・雇用保険に加入することにもなっている。また、労働組合法や労働契約法も適用される。

 一方で、執行役員が労働者扱いされなかったケースとして「業績不振の会社が『執行役員退職慰労金規則』を不利益に変更したこと」を是認した裁判例(最二判H19.11.16)が挙げられることがある。
 しかし、それには疑問符が付く。 というのも、この事件は、従業員として退職(この時に従業員としての退職金を受給)した後に執行役員に就任したことや実態として取締役と同等の処遇を受けていたこと、同規則が代表取締役の決裁で改定される内規であること等も勘案しての“事情判決”であり、「同規則の改定が労働条件の不利益変更(労働契約法第9条に抵触)には当たらないと判じた」と解釈するのには無理があるからだ。

 ところで、執行役員が労働者であることをもって、「執行役員を解任する際には労働基準法および労働契約法の制約を受ける」と主張する識者もいる。
 しかし、それは少し説明不足の誹りを免れえまい。
 会社法は「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」は、取締役会(または清算人会)が決定権限を有する(同法第362条第4項・第399条の13第4項・第489条第6項)としている。 つまり、執行役員は、取締役会(または清算人会)の決定により解任することが可能なのだ。
 ただ、気を付けなければならないのは、執行役員としては解任されても、会社との雇用関係がなくなるわけではないことだ。 その点で、労働基準法および労働契約法の制約を受けるというのは正しい。
 これに関しては、そもそも「執行役員も役職の一つ」と認識するならば、その役職を解くのに(民事上の責任を問われることはあるとしても)法令の制約を受けないのは理解に難くないだろう。 そして、役職を解かれたからと言って即解雇になるわけではないのも、一般労働者と同じと考えればよい。

 もっとも、執行役員解任の理由が労働契約法第16条の求める合理性・相当性を満たすなら労働者としても解雇することが可能だ。 とは言うものの、そのハードルは極めて高いことは承知しておかれたい。


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