人事担当者としては、社内での資格等級に係る「昇格・降格」と、役職に係る「昇進・降職」とは、厳密に区別して考えなければならない。昇格・昇進ならまだしも、「(資格等級の)降格」と「(役職の)降職」とを混同して取り扱うとトラブルの素になりかねないので、特に注意を要する。
まず、資格等級の昇降格についてであるが、資格等級制度のある会社では、資格等級ごとの要件を設けているはずなので、昇格も降格も、その基準に照らして合理的に行わなければならない。
ところが、多くの企業で見られるような「年功型人事」をベースに置いたままの資格等級制度においては、「経験が長くなるほど能力が高まる」という前提で設計されているので、簡単に降格できるものではない。こういう制度の下で降格するには、「能力が低下したのが明らか」もしくは「懲戒処分に該当した」といった客観的な資料が必要になる。
片や、役職については、会社は、人事権行使の一環として、従業員を役職に就けたり解任したりすることができるものとされる。すなわち、「昇進させるのも降職させるのも基本的には会社の裁量で可能」ということだ。しかし、これにも注意すべき点がある。
1つ目は、法律に明確に規定されている「違法な降職」というものがある。例えば、労働組合の活動を行ったこと、育児休業・介護休業や年次有給休暇を取得したこと、会社の違法行為を公益機関に通報したこと等を理由とする降職は、許されない。
2つ目に、「違法」ではなくても、「合理性の無い降職」は、権利を濫用したものとして、無効とされる。セクハラ事件・パワハラ事件として訴訟にまで発展するケースも少なくない。
そして3つ目が、賃金の問題だ。「役職を解かれたことに伴う役職手当の減額(もしくは不支給)」には、一応の合理性があるとされるが、しばらくの間、その差額を「調整手当」として支給する等の“激減緩和措置”が必要だろう。
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