ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

高度外国人材を巡る国の施策の動向

2018-06-23 13:59:21 | 労務情報


 6月は厚生労働省の「外国人労働者問題啓発月間」。今年の標語は「外国人雇用はルールを守って適正に~外国人が能力を発揮できる適切な人事管理と就労環境を!~」だとか。6月も終わろうとしている頃に今さらではあるが、外国人関係の記事を掲載することにしたい。

 さて、同省の取りまとめによれば、昨年10月末現在、外国人労働者数は、1,278,670 人であった。これは前年の同時期と比べて約20万人(18.0%)の増加であり、外国人労働者の届け出が義務化された2007年10月以来、過去最高の数値となっている。

 中でも、企業が持続的成長をするためのイノベーション等の担い手として期待が高まっているのが、高度な能力・資質・経験などを有する「高度外国人材」だ。
 これに関する国の施策としては、わが国で就労しようとする外国人について、学歴・職歴・年収などをポイント制で評価し、そのポイントの合計が一定点数に達した者には、各種優遇措置のある在留資格「高度専門職1号」または「高度専門職2号」(1号取得者が3年以上在留し資格変更を許可されたもの)を付与する、という仕組みが、2015年4月から実施されている。

 主な優遇措置を見てみると、「高度専門職1号」では、(1)在留期間「5年」の付与(通常は1年または3年)、(2)許可された活動以外の活動を行うことが可能(ただし、その分野の関連業務に限る)、「高度専門職2号」では、(1)在留期間が無期限、(2)在留資格で許可された分野に関連しなくても複合的な在留活動を許容、等が挙げられる。
 ちなみに、昨年の法改正により、高度専門職は最短1年の在留で永住許可が得られる可能性がある(「日本版高度外国人材グリーンカード」)こととされたが、「高度専門職2号」と「永住」とにそれぞれ一長一短あるので、どちらを選ぶべきかは、当該外国人の働き方や将来ビジョンを考慮する必要がある。

 なお、昨年6月9日に閣議決定された『未来投資戦略2017』で、政府は、2020年末までに10,000人、2022年末までに20,000人の高度外国人材認定を目指す、としている。また、アニメーションやファッションなどの分野で活躍する「クールジャパン人材」についても、今年度内をめどに「高度専門職」の制度に組み込まれることが決定されている。

 ところで、外国人雇用に関する現状を見れば、今や一部の業態では、人手不足により、留学生による資格外活動(アルバイト)や「技能実習」という名の実質的な単純労働に頼らざるを得なくなっている。これらについての是非論はさておき、今後、わが国の労働人口が減少していく中、外国人労働者が様々な分野で増加していくことは想像に難くない。
 好むと好まざるとにかかわらず、自社において外国人労働力をどのように活用するかは、今は外国人を雇用していない企業においても、少なくとも検討は始めておかなければならない課題と言えるだろう。


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「ノーワーク・ノーペイ」=「ノーペイ・ノーワーク」

2018-06-13 19:17:07 | 労務情報


 会社は、労働者から労務の提供を受け、その対価として賃金を支払う。逆に、労務の提供を受けていなければ、原則として(年次有給休暇・休業手当など法令で定められているものや就業規則等で賃金を支払う旨の特約を設けているものを除き)、賃金は発生しない。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」と言う。
 端的な例を挙げると、従業員が遅刻した場合に、その時間数の分の賃金を支払わないのは、遅刻した理由がどうであれ(体調不良はもとより、肉親の危篤であろうと、公共交通機関の遅延であろうと)、特約の無い限り有効だ。育児休業や子の看護休暇を取得する場合でも(会社は拒否できないが)、あるいは法定の健康診断を受診する場合でも(その費用は会社が負担すべきとされているが)、就労しなかった分の賃金まで支払わなければならないわけではない。さらに加えて言うなら、業務上の傷病により就労できない場合ですら(労働基準法は6割以上の「休業補償」を義務づけているものの)、「賃金」としては支払う必要が無い。

 しかし、このことは、その裏返しである「ノーペイ・ノーワーク」もまた真であることに通じる。すなわち、賃金を支払わずに労務を提供させることはできないのだ。
 これに関しては、賃金不払い残業(「サービス残業」とも呼ばれる)は論外として、例えば「朝10分間遅刻した従業員の賃金を30分間分差し引く」というようなことをしていないだろうか。あるいは、例えば「不祥事を起こした従業員に自宅待機を命じて、その間の賃金を支払わない」といったことを考え無しにしてはいないだろうか。
 これらについても、就労した分の賃金は支払わなければならないことになる。ちなみに、自宅待機のケースでも、従業員は就労している(「自宅で待機せよ」との業務命令に従っている)のだから、そこに賃金が発生する理屈だ(名古屋地判H3.7.22等)。

 こうした場合に賃金を控除できるのは、懲戒処分として「減給」や「無給の出勤停止」を科す場合に限られる。そのためには、就業規則等にその旨を(もちろん労働基準法が認める範囲内で)定めておかなければならない。仮に、従業員の過失により会社が損害を被ったというケースであっても、それは民事上の損害賠償を求めるべき話であって(裁判所がそれを是認するかどうかは別にして)、その分を只働きさせることにはなりえないのだ。

 結論として、不就労分に賃金を支払うのも、就労分の賃金を支払わないのも、法令に特段の定めがある場合または就業規則等に特約がある場合に限られ、それ以外は、原則どおり「ノーワーク・ノーペイ」であり、また「ノーペイ・ノーワーク」でもあることを忘れてはならない。


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セクハラ防止措置は業種・業態や事業規模を問わず事業主すべてに義務づけ

2018-06-03 15:19:18 | 労務情報

 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために必要な措置を講じなければならない(男女雇用機会均等法第11条)。

 これに関して、厚生労働大臣の指針は、「事業主が雇用管理上講ずべき措置」として、次の9項目を挙げている。
  1.職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
  2.セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
  3.相談窓口をあらかじめ定めること。
  4.相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、セクハラ発生のおそれがある場合やセクハラに該当するか否か微妙な場合でも、広く相談に対応すること。
  5.事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
  6.事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
  7.再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
  8.相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
  9.相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

 これらの措置は、業種・業態や事業規模を問わずすべての事業主に義務づけられており、また、派遣労働者に関しては、派遣元のみならず派遣先も措置を講じなければならない。
 これに違反している事業主は労働局から勧告を受け、勧告に従わないと氏名が公表されることになっているので、もし措置を講じていないのであれば、急ぎ対処しておきたい。


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