働き方改革は、「“働き方”の“改革”」なのだから、本来は、業務プロセスの見直しと効率化を目指すものだ。
しかし、現状を見ると、「時間外労働の上限規制」等への対応のため、「労働時間を短縮すること」だけに主眼を置かれてしまっている感は否めない。さらには、「(労働時間規制の適用を受ける)非管理職の労働時間短縮」にまで目的が矮小化される傾向(「二重の矮小化」と呼ばれる)まで見られる。
もっとも、企業経営者にしてみれば労働基準法に違反して罰則を科されたくはないだろうから、こうした傾向も理解できないではないが、もしや、自社の従業員の労働時間を短縮することばかりに頓着して、いわゆる「下請けイジメ」の状態を作っていないだろうか。
政府(厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会)では、これを「働き方改革に伴う『しわ寄せ』」と称し、この11月を「しわ寄せ防止キャンペーン月間」と銘打って、大企業や親事業者へ向けての啓発に取り組んでいる。
具体的に問題となるのは、次のようなケースで、これらは下請法や独占禁止法で定める禁止行為に該当する可能性があるとされる。
(1) 買いたたき
[具体例] 短納期発注により人件費等のコストが大幅に増加したにもかかわらず、発注者は通常の単価と同一の単価を一方的に定めた。
(2) 減額
[具体例] 予め設定されていた「特急料金」について、発注者は「予算が足りない」等の理由により、通常の代金しか支払わなかった。
(3) 不当な給付内容の変更・やり直し
[具体例] 毎週特定曜日に数台のトラックを待機させておく契約であったところ、当日になって「今日の配送は取りやめになった」と一方的にキャンセルし、その分の対価を支払わなかった。
(4) 受領拒否
[具体例] 発注後、一方的に納期を短く変更し、変更後の納期に間に合わなかったことを理由に商品の受領を拒否した。
(5) 不当な経済上の利益提供要請
[具体例] 発注者自ら行うべき発注データの自社システムへの入力業務を受注者に無償で行わせた。
ご存じのように下請法や独占禁止法にも罰則はある。
「働き方改革」の大義を振りかざしながら思わぬコンプライアンス違反を問われることのないよう気を引き締めたい。そもそも、働き方改革は、下請業者や取引先等と協力し合いながら進めていくテーマであることを、経営者は認識すべきだろう。
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