会社は、労働契約に付随して、従業員に対する「安全配慮義務」を負うものとされる。
この「安全配慮義務」について、かつては職場での事故や怪我を防止する(“安全”への配慮)ことに重点が置かれていたが、昨今では、過重労働等を原因とする脳・心臓系の疾病やうつ病などが労災認定されるようになり、メンタル面を含めた「健康配慮義務」も重視されるようになってきた。
ちなみに、ここで言う「過重労働」とは、必ずしも長時間労働だけを指すのではない。“残業ゼロ”の通信会社従業員が心臓病で死亡したのは「長期の宿泊研修を強いられた過労が原因」として労災を認めた判決(札幌地H21.11.12判)もあることは心に留めておきたい。
この「健康配慮義務」は、用語自体は比較的新しいものだが、その考え方の本質は、これを包括する「(従来からの)安全配慮義務」と何ら異なるものではない。
つまり、従業員が心身の健康を害することを会社が予測でき(予見可能性)、会社としてそれを回避する手段がある(回避可能性)なら、その手段を講じなければならないということだ。
万が一、安全配慮(健康配慮を含む)義務違反で事故が起きた場合は、会社は民事・刑事の両面で責任を問われることになる。
従業員の“能力”ばかりでなく“健康状態”にも配慮した適切な業務を与えることが、経営者の義務であり責任であると言えよう。
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