ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

在留資格「特定技能」の新設で外国人は雇いやすくなったか?

2019-06-23 11:59:03 | 労務情報

 これまで、わが国では、「技能実習」(日本の技能・技術等を開発途上地域へ移転させる目的で就労するための在留資格)や留学生等による資格外活動(アルバイト)を除き、外国人が単純労働に就くことは、原則として許されていなかった。
 この政策自体は、国内の雇用市場を安定させるために必要かつ有効な措置と言えるが、今や一部の業態では、人手不足により外国人の労働力に頼らざるを得なくなっているのも実態だ。
 こうした現状にあって、昨年12月8日に出入国管理法が改正され、単純労働を可能とする在留資格「特定技能」が新設された。

 これは、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(特定産業分野;「介護」・「外食」・「宿泊」等、14業種)において、一定程度の技能と日本語能力を有する外国人に対し、就労を可能とする在留資格を与えるというものだ。出入国在留管理庁(旧・入国管理局)では、これにより、5年間で34万5千人の外国人受け入れを見込んでいる。
 その技能や日本語能力を計る試験は、国内のほか海外でも実施され、海外では、「国際交流基金日本語基礎テスト」を実施することとされた9か国(ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル)のうち試験を実施できる環境が整った国から順次、行われることとなっている。
 その先陣を切って4月13日・14日にフィリピン・マニラで実施された「介護」分野の特定技能試験は、受験の受け付けを始めた3月20日の当日中に定員125人が満席になり受験できない人が多数生じたほどの盛況ぶりだという。

 ところで、こうした動きを“渡りに舟”と歓迎する向き(特に人手不足に喘いでいる企業)もあるが、決して「外国人を雇いやすくなった」というわけでもないので、安易に飛びつくのは危険だ。
 というのも、まず、外国人であっても「労働者」なのだから、労働基準法・最低賃金法・労働契約法・労働組合法等の労働関係法令は日本人同様に適用される。労働保険や社会保険(社会保障協定の締結相手国から派遣された者を除く)にも加入させなければならない。
 また、外国人であることを理由として日本人より低額の賃金を支払ってはならない。もちろん、経験・能力等を考慮して適正な労働条件を設定するのは(日本人と同様に)当然のことではあるが。
 そして、「特定技能」により外国人を雇い入れようとする企業にとって最も負担となるのは、「外国人支援計画」(外国人が特定技能活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画)を策定しなければならないことだろう。「技能実習」なら仲介する事業協同組合等がお膳立てしてくれていたところ、「特定技能」は直接雇用なので自社で対応しなければならないことになる。

 外国人の活用にあたっては、こういったことまで踏まえて、総合的に自社の要員計画を考える必要があるだろう。


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「グッドキャリア企業アワード2019」候補団体の自薦受付中

2019-06-13 21:11:49 | 労務情報

 厚生労働省では、現在、「グッドキャリア企業アワード2019」候補の自薦を受け付けている。
 これは、平成27年度までは「キャリア支援企業表彰」として実施していたものを、平成28年から呼称変更したもので、これまでに68社が表彰されている。

 募集対象は「従業員の自律的なキャリア形成(職業生活設計・働き方の実現)を支援するための取り組みを行っている企業等」とされ、「大賞」「イノベーション賞」それぞれの受賞企業は11月に表彰される。

 具体的には、応募企業が行ったキャリア支援策を、次の3側面から評価し、選考する。
(1) キャリア支援の特徴、理念
   → 自社におけるキャリア支援の特徴を理解しているか。
    人事管理(人材マネジメント)上の課題や人材育成ビジョン・企業ビジョンと有機的な関連があるか。
(2) キャリア支援の取り組み
   → キャリア形成について考える機会、キャリア形成に資する職業能力開発・自己啓発の機会や職業能力評価の仕組みがあるか。
    それらの機会・仕組みが定着しているか。その他、他企業のモデルとなる優れた取り組みを行っているか。
(3) キャリア支援による効果等
   → 具体的な効果が現れているか。
    経営上または人事管理(人材マネジメント)上の課題の解決につながっているか。

 この表彰を受ければ、「人-ヒト-」を大事にしている企業であることが広く世間に認知され、社内外のイメージアップに効果があるはずだ。何らかのキャリア支援策を講じている会社は、応募を検討してみてはどうだろうか。

 応募方法は、厚労省グッドキャリアプロジェクトの応募フォームから直接、または同サイトから応募書類をダウンロードしてメールまたは郵送によるものとし、締め切りは、7月31日(水)必着とのことだ。

【参考】厚労省リーフレット


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従業員から会社への「逆求償」とは?

2019-06-03 10:59:04 | 労務情報

 従業員が事業の執行に伴って第三者に損害を与えた場合、原則的には、使用者(会社)がその責任を負わなければならない(民法第715条第1項)が、その一方で、同条第3項は、それを当該従業員に求償することを妨げない旨を定めている。
 とは言え、賠償した全額を従業員に求償するのは、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべき」(最一判S51.7.8)とされ、当該従業員の故意や重過失による場合を除き、認められない。 これは、「報償責任の原理」(利益の存するところに損失も帰する)に基づく考え方だ。

 さて、ここまでは「会社が被害者に対して損害賠償し、それを当該従業員に求償する」という構図の話だ。 では、その逆に、「従業員が被害者に対して損害賠償し、それを会社に求償(「逆求償」とも呼ばれる)する」ということは、可能なのだろうか。

 こういうケースを法律は想定していないが、結論を言えば、「可能」だ。
 トラックドライバーが業務遂行中に交通事故を起こして相手方に支払った損害賠償金について当時の雇い主に求償した事案(佐賀地判H27.9.11、福岡高裁上告棄却H28.2.18)において、裁判所は、「当該被用者の責任と使用者の責任とは不真正連帯責任の関係にある」として、会社にその7割を支払うよう命じている。

 もっとも、求償の可否以前に、そもそも業務中に事故を起こした従業員が勝手に示談を進めてしまうこと自体、会社は許すべきではない。 “事故隠し”につながりかねないばかりでなく、例えば過剰請求といった新たな不正を生む可能性もあるからだ。
 こうした事態を防ぐため、会社は「事故発生時には速やかに会社に報告し、対応について指示を受ける」旨を就業規則に定め、それを従業員に順守させることを徹底すべきだろう。 そして、事故を起こしたことよりも、それを「報告しなかったこと」に対する処分をより厳しいものとすることで、その実効性を担保したい。


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