これまで、わが国では、「技能実習」(日本の技能・技術等を開発途上地域へ移転させる目的で就労するための在留資格)や留学生等による資格外活動(アルバイト)を除き、外国人が単純労働に就くことは、原則として許されていなかった。
この政策自体は、国内の雇用市場を安定させるために必要かつ有効な措置と言えるが、今や一部の業態では、人手不足により外国人の労働力に頼らざるを得なくなっているのも実態だ。
こうした現状にあって、昨年12月8日に出入国管理法が改正され、単純労働を可能とする在留資格「特定技能」が新設された。
これは、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(特定産業分野;「介護」・「外食」・「宿泊」等、14業種)において、一定程度の技能と日本語能力を有する外国人に対し、就労を可能とする在留資格を与えるというものだ。出入国在留管理庁(旧・入国管理局)では、これにより、5年間で34万5千人の外国人受け入れを見込んでいる。
その技能や日本語能力を計る試験は、国内のほか海外でも実施され、海外では、「国際交流基金日本語基礎テスト」を実施することとされた9か国(ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル)のうち試験を実施できる環境が整った国から順次、行われることとなっている。
その先陣を切って4月13日・14日にフィリピン・マニラで実施された「介護」分野の特定技能試験は、受験の受け付けを始めた3月20日の当日中に定員125人が満席になり受験できない人が多数生じたほどの盛況ぶりだという。
ところで、こうした動きを“渡りに舟”と歓迎する向き(特に人手不足に喘いでいる企業)もあるが、決して「外国人を雇いやすくなった」というわけでもないので、安易に飛びつくのは危険だ。
というのも、まず、外国人であっても「労働者」なのだから、労働基準法・最低賃金法・労働契約法・労働組合法等の労働関係法令は日本人同様に適用される。労働保険や社会保険(社会保障協定の締結相手国から派遣された者を除く)にも加入させなければならない。
また、外国人であることを理由として日本人より低額の賃金を支払ってはならない。もちろん、経験・能力等を考慮して適正な労働条件を設定するのは(日本人と同様に)当然のことではあるが。
そして、「特定技能」により外国人を雇い入れようとする企業にとって最も負担となるのは、「外国人支援計画」(外国人が特定技能活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画)を策定しなければならないことだろう。「技能実習」なら仲介する事業協同組合等がお膳立てしてくれていたところ、「特定技能」は直接雇用なので自社で対応しなければならないことになる。
外国人の活用にあたっては、こういったことまで踏まえて、総合的に自社の要員計画を考える必要があるだろう。
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