ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

控除対象扶養親族と「家族手当」の支給対象

2010-11-29 09:38:16 | 労務情報
 税法改正により、所得税(国税)においては、平成23年1月1日から年少扶養親族(16歳未満の扶養親族)に対する扶養控除が廃止される。
 これに関連して、給与面で「家族手当」の支給基準を見直しておかなければならない会社もあるので、注意したい。具体的には、「所得税法上の控除対象となる親族を有する者に対して家族手当を支給する」としている場合などだ。
 そのような会社では、厳格に運用するなら、来年1月以降は年少扶養親族に係る家族手当は支給しないことになるが、それで良いのだろうか。

 もっとも、今後家族が増える従業員については、その家族が「所得税法上の控除対象となる親族」に該当しないのなら、家族手当を新たに支給する必要は無い。
 問題となりそうなのは、平成22年12月時点で年少扶養親族を有する従業員についてだ。その家族手当を翌月からいきなり不支給としては、従業員からの反発を受けるのは必至であろう。
 そういった紛争は(当然ながら)まだ生じていないが、もし訴訟になれば、おそらく裁判所は、「就業規則等に記載されている文面」ではなく「その会社にとって家族手当を支給する本来の目的」に沿った運用がなされたか否かによって判断することになると推測できる。
 そう考えると、争いになると会社側の分が悪いと言わざるを得ない。

 会社としては、これを機に家族手当の支給対象者を見直して、例えば、客観的にも明確な「健康保険の被扶養者を有する者」と変更することも検討したい。
 また、支給基準を変更するしないにかかわらず、その措置が当人にとって不利益に働く場合は、当分の間、「調整手当」を支給するなどの激変緩和措置を講じておくべきだろう。


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派遣労働者が派遣先の就業規則に違反したら

2010-11-23 17:57:51 | 労務情報
 派遣労働者を受け入れている会社が、自社(派遣先)の都合でその派遣労働者を解雇することは可能であろうか。
 結論を先に言えば“否”なのであるが、その根拠および関連事項を少し解説しておきたい。

 そもそも派遣労働者は自社の従業員ではない。派遣業務が不要となったのなら派遣元に対して「今後の派遣は不要」と通告するに過ぎず、それを受けてその労働者を解雇するかどうかは“派遣元における雇用関係”の問題である。
 とは言っても、派遣先が一方的に派遣契約を中途解約したならば派遣元は損害賠償を請求してくるかも知れないし、違約金の定めが有るなら支払わなければならないだろう。しかし、それは、派遣元との会社間の問題であって、派遣労働者個人に対して派遣先が解雇予告手当支払い等の義務を負うわけではない。

 では、派遣先の就業規則に抵触する行為が有ったような場合でも、派遣先がその派遣労働者を解雇することができないのか。
 実は、それでも、派遣先が独自に制裁を課すことはできないのだ。やはり自社の従業員でないからである。もどかしいかも知れないが、これも派遣元に連絡して、派遣元の判断に委ねるしか無い。
 もっとも、こういった理由で派遣契約を中途解約するのなら、それに伴う損害賠償や違約金に関しては、むしろ派遣元がその責を負うことになる可能性が高いと思われる。

 なお、「別の労働者を派遣してほしい」という意図を含んで派遣契約を中途解約するのは、労働者派遣法第26条第7項で禁じられている「労働者を特定する行為」とみなされることがあるので、避けるべきであろう。


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労災事故と民事訴訟

2010-11-13 17:11:13 | 労務情報
 労災保険は、業務上(業務に起因し、業務を遂行する過程で)傷病を負った労働者に対して、国がその治療費を負担し、死亡や障害や休業に対する補償を行う制度である。
 労災事故が発生した場合は、会社は、被災労働者(またはその家族や遺族)の福利のために全面的に協力しなければならない。

 しかし、業務上の傷病であったならば、会社は労災を使ったことですべての責任を免れるわけではない。
 すなわち、事故の原因が業務命令自体に違法性が有ったためであるなら「不法行為」として、会社が安全配慮義務(労働者が安全に仕事できるよう配慮すべき会社の義務)を果たさなかったためであるなら「債務不履行」として、民事訴訟を提起される可能性もあるのだ。
 訴訟そのものは会社に非が無いのなら恐れることは無いが、勝敗に関らず判決は公開され、“いわゆる事件名”に社名が冠されて『判例集』に載ることは承知しておかなければならない。それを考慮したうえで、場合によっては被災労働者(または遺族)からの請求を認諾してしまうのが賢明であるケースも発生するかも知れない。

 そもそも会社は労災事故が起こらないように最大限の配慮を尽くすべきであるし、事故が起きるのは会社として恥ずべきことと認識すべきである。
 とは言っても、万一労災事故が起きてしまったときには、間違っても「労災保険を使わせない」という態度には出てはならない。それは「労災隠し」として労働安全衛生法により罰せられるばかりか、民事訴訟においても「会社側に悪意有り」として裁判官の心証を悪くすることにもなるからだ。


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裁判員休暇は有給?無給?

2010-11-03 13:51:02 | 労務情報

 巷間、裁判員制度について話題になっている。
 死刑の判断を迫られる精神的ストレスの話もさることながら、企業の労務管理の立場からは、従業員が裁判員として会社を休んでいる間の給料を出すか出さないかが悩ましい問題だ。

 まず、従業員が裁判員に選ばれた場合には、会社は必要な日数の休暇を与えなければならないことは大前提として確認しておきたい。裁判員として審理に参加するのも、選挙の投票に行くのと同様に、労働基準法第7条に言う「公民としての権利」であるからだ。
 しかし、投票に行くのなら通常は半日程度の時間を与えれば良い話だが、裁判員となると少なくても3日、長ければ1週間以上も本来の仕事ができなくなってしまう。昨日(11月2日)から鹿児島地裁で始まった殺人事件の裁判では40日間もの日程が組まれているとの話だ。
 しかも、会社は裁判員に任じられたことを理由に不利益に取り扱ったり裁判員を辞退させたりしてはならないのだから、雇う側としては頭が痛いところだ。

 では、この裁判員休暇について賃金を支払うべきかというと、それは企業の任意とされている。「ノーワーク・ノーペイ」の原則どおり、働いていない時間については無給とすることも許されるわけだ。
 「企業の社会的責任」というものを考えれば「慶弔休暇」のような「特別有給休暇」として取り扱っても良いのかも知れないが…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  


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