従業員を夜間に就労させるにあたってはさまざまな注意事項がある。
まず、労働基準法第37条第3項では、夜勤に対して25%以上の深夜手当を支払うべきことを定めている。
この点に関し、昼間勤務の延長(いわゆる「深夜残業」)の場合に法定労働時間(原則として1日8時間または週40時間)を超えた時間数に対しては時間外割増も加えるのは周知の事だろうが、元々の所定労働時間がすべて深夜時間帯のみである場合であっても、週休1日制や変形労働時間制などを採用している事業場では法定労働時間を超える夜勤が生じることもあり、そうしたケースにおいては、その超えた時間数に対して「深夜手当+時間外割増」で賃金支払いの義務が生じる。
そして、労働基準法第41条第2号に該当する管理監督者には時間外割増も休日割増も対象とならないものの、深夜手当(25%以上の部分のみ)は支払わなければならないことも、忘れてはならない。
さて、夜勤に関してしばしば問題となるのが「実働時間」の概念だ。 特に仮眠時間を設けている夜勤において、その「仮眠」が「休憩(=実働時間に含まれない)」なのか「手待ち(=実働時間に含まれる)」なのかが争いになりがちだ。
行政解釈上、「休憩時間」とは「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間」(昭22・9・13発基17号)であるとされ、「労働者が自由に利用できる時間」(昭23・5・14基発769号、昭39・10・6基収6051号)でなければならない。
なので、例えば、仮眠中に電話が掛かってくることが頻繁にあり、その対応が義務付けられているのであれば、「労働から解放されていない」または「自由に利用できない」ので「休憩時間」とは認められず、一種の「手待ち時間」ということになる。
ビル管理業や守衛の仮眠時間を「労働からの解放が保障されていない」として労働時間であると断じた裁判例(最一判H14.2.28、東京高判H23.8.2等)も参考にしたい。
ところで、「夜勤」と似たような働き方として「宿直」が挙げられるが、この二者はまったく性格が異なるものだ。
「夜勤」が基本的には通常業務を行うのに対して、「宿直」は、通常業務から離れて「寝泊まり」することに意味のある業務をいう。
したがって、深夜にのみ営業している飲食店などは言うに及ばず、機械が終日稼働している工場など、そもそも夜間に働くことを常態とする事業場においては、仮に交替で勤務しない時間帯を設けたとしてもそれは「休憩」でしかなく、「宿直」を導入できる余地はない。
ここまで論じてきたように、「休憩」も、「仮眠」も、あるいは「宿直」も、そのメルクマールとして、「労働からの解放」が挙げられる。
これは、明示的に業務を命じていないだけではなく、労働者が働いているのを会社が黙認していたり、量的・質的に働かざるを得ない業務を与えていたりということも無いことを要する。この点、正しく理解しておきたい。
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