令和4年7月から、常用労働者数300人を超える一般事業主に、「男女の賃金の差異」の公表が義務づけられている。
従来から「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」として以下8項目のうちから1つを選択して公表することとされていたが、それに「男女の賃金の差異」(この項目は選択でなく必須)が加わった形だ。
(1) 採用した労働者に占める女性の割合
(2) 男女別の採用における競争倍率
(3) 労働者に占める女性の割合
(4) 係長級にある者に占める女性の割合
(5) 管理職に占める女性の割合
(6) 役員に占める女性の割合
(7) 男女別の職種または雇用形態の転換実績
(8) 男女別の再雇用または中途採用の実績
【参考】厚生労働省 > 女性活躍推進法特集ページ
具体的には、該当する各企業は、事業年度が終了したら、「女性従業員の平均年間賃金」÷「男性従業員の平均年間賃金」の割合(パーセント表示)を、「全労働者」・「正規雇用労働者(期間の定めなくフルタイム勤務する労働者)」・「非正規雇用労働者(パートタイム労働者および有期雇用労働者)」の3区分で算出して公表する。
ちなみに、「退職手当」や「通勤手当」は個々の企業の判断により「賃金」から除外しても差し支えない(ただし男女で異なる取り扱いをしてはならない)。
さて、この情報公表は、自社ホームページ等、求職者が容易に閲覧できる方法により開示することとされている。 すなわち、求職者(特に女性)が応募先を選定する際の資料として活用することを想定した仕組みとなっている。
しかし、“賃金差異の平均値のみ”をもって自社の女性活躍推進状況を求職者に伝えるのが難しいケースもある。 例えば、女性の活躍を期待して新たに多くの女性従業員を採用し始めた企業では、女性従業員の平均年間賃金は自ずと男性従業員のそれよりも低くなる。
そこで、公表する数値には補足説明を加えておくことを強くお勧めしたい。
賃金差異は公表しなければならないことになったわけだが、これに併せて、数値だけでは伝えきれない、より詳細な情報や補足的な情報も提供して、自社の実情を求職者に正しく理解してもらうように努めるべきだろう。
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業務によっては、その手段・方法や時間配分等を会社(上司)から命じるよりも労働者個々の裁量にゆだねた方が、より良い成果を期待できる業務がある。
こうした業務に就く者には、「裁量労働制」の適用が効果的だ。
裁量労働制には、デザイナーやコピーライター等のクリエイティブな業務(労働基準法施行規則第24条の2の2第2項で定められた19業種に限定されている)に就く者を対象とする「専門業務型」(労働基準法第38条の3)と、企画・立案・調査・分析の業務に就く者(その業務を適切に遂行するための知識・経験等を持たないものを除く)を対象とする「企画業務型」(労働基準法第38条の4)の2種類がある。
裁量労働制を導入するには、「専門業務型」は労使協定の締結が、「企画業務型」は労使委員会の決議(5分の4以上の賛成)が、それぞれ必要であり、いずれも労働基準監督署へ届け出なければならないこととなっている。
ただ、その業務に就いている労働者本人の(個々の)同意については、「企画業務型」では必須とされている一方、「専門業務型」では必須ではない。 もっとも、専門業務型であっても、労使協定で本人同意を得るべき旨が定められていれば必要となるし、そうでなくても、制度の円滑な実施を考えれば本人同意があったほうが望ましいには違いない。
この点に関し、年の瀬の令和4年12月27日、厚生労働省に設置された労働政策審議会(労働条件分科会)は、次の内容を含む報告書を公表した。
○ 専門型について、本人同意を得ることや同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないこととすることが適当である。
○ 本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について説明することが適当であること等を示すことが適当である。
○ 同意の撤回の手続を定めることとすることが適当である。 また、同意を撤回した場合に不利益取扱いをしてはならないことを示すことや、撤回後の配置や処遇等についてあらかじめ定めることが望ましいことを示すことが適当である。
※お役所らしい持って回った表現ですが、言わんとすることは読み取れるでしょう。
要は、「専門業務型の裁量労働制でも本人同意を必須とするべき」と提言しているわけです。
ちなみに、この議論の途中で、興味深いデータが示されている。
第15回これからの労働時間制度に関する検討会資料「これまでの構成員のご指摘を踏まえた関連資料」(P.1)によれば、本人同意がある場合は、1週あたりの労働時間が60時間以上となる確率も、健康状態を「あまりよくない」・「よくない」と答える確率も、ともに低くなっているという調査結果があるらしい。
これは、対象労働者自身が制度の趣旨を理解して働くことの効能と言えそうだ。
ところで、裁量労働制の適用に本人が同意した場合、その同意はいつまで効力を有するのだろうか。
実は、本人同意の有効期限に関して、現行法令は定めを置いていない。 企画業務型においては、労使委員会決議に有効期限を定めなければならない(労働基準法施行規則第24条の2の3第3項)ことから、本人同意もその期間内であると考えられるが、専門業務型においては、本人同意の期限を定めないことも(現行法令上)許されることになる。
いずれにしても、これらの議論を整理して近いうちに法制化される見込みであるので、裁量労働制を採用している会社は、そのつもりで準備しておくべきだろう。
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