ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

介護休業に関する誤解のいくつか

2021-07-23 14:59:23 | 労務情報

 介護休業は、育児休業と並ぶ雇用継続のための両輪だ。 しかし、本人も会社も予め準備する時間の取れる育児休業と違って介護休業は突発的に発生するためか、手続きが分かりにくく、また、多くの誤解も生じているようだ。
 手続きの分かりにくさはともかく、誤解は解いておかなければならないので、ここで整理してみたい。

 誤解の最たるものは、介護休業の開始についてだろう。
 育児介護休業法第11条に「労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。」とある通り、介護休業を必要とする労働者が申し出るだけで介護休業を取ることができ、それに対する「会社の承認」などといったものは必要ない。
 これに関して、会社は、対象家族(「配偶者(いわゆる内縁を含む)」、「父母」、「子」、「同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫」)が要介護状態(傷病・障害により2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)にある事を証明できる書類を提出させることができるが、こういった書類が提出されなかったとしても介護休業の申し出自体が無効となるわけではない点には気を付けたい。

 また、介護休業を取得できる従業員は、正社員に限らない。
 以下の5要件を満たせば、パートタイマーであれ、アルバイトであれ、対象者となるのだ。
  1)日々雇用でないこと
  2)介護休業取得予定日から起算して93日+6か月を経過する日までに労働契約期間が満了する(更新されない)ことが明らかでないこと
  3)雇い入れ後1年以上を経過していること(※この要件は法改正により令和4年4月1日以降は本則上は撤廃、それ以降は労使協定に定めがある場合に限る)
  4)申し出から93日以内に雇用関係が終了しないこと(労使協定に定めがある場合)
  5)週の所定労働日数が2日以下でないこと(労使協定に定めがある場合)

 そして、「介護休業の終了」は「介護の終了(多くの場合は“お看取り”)」を意味しない。 これも、育児休業とは性格を異にする点と言えよう。
 そもそも、介護休業は「介護のために必要な期間」ではなく、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間」と理解するべきであって、その期間中に、必要に応じて対象家族を施設に入れるなり、自宅を改装するなり、また、介護保険の給付等の手続きを進めるなり、そういった時間に充てることが肝要だ。 介護休業は、最大3回に分割して取得できる制度になっているのも、そのためだ。

 会社の人事担当者は、平時からこれらを正しく理解し、いざ介護休業が必要になった従業員が発生した時には(まさに突発的に発生するので)、慌てずに制度を運用できるようにしておきたい。


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三六協定の対象に出向者も含めていますか

2021-07-13 16:59:12 | 労務情報

 出向(※)とは、所属している会社(出向元)とは異なる会社(出向先)で業務の指揮命令を受けて従事することをいう。
 ※出向元との雇用関係を絶つ「転籍」のことを「移籍出向」と呼ぶこともあるが、本稿では出向元に所属したまま他の会社に行く「在籍出向」のことを指して単に「出向」と呼ぶことにする。

 出向者は、出向先の業務指示に従うのだから、始業・終業時刻や休憩時間等についても(特段の取り決めが無い限り)出向先の規定に従うものとされるのが一般的だ。
 残業についてもこの延長で論じられるわけで、出向先は、出向者に対して、出向先の就業規則と三六協定に基づいて残業を命じることが可能である。派遣労働者の場合は、残業については(と言うよりも「労働条件全般について」であるが)“派遣元”の定めに従わなければならないのとは扱いが異なる。
 そして、出向者も三六協定の適用対象であるということは、すなわち、会社が三六協定を締結する際には、その「労働者総数」に出向者も含めてカウントしなければならないということでもある…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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中高齢応募者に経験要件を課したい場合の求人

2021-07-03 17:59:08 | 労務情報

 従業員の求人において、例えば「40歳以上は経験者のみ応募可。40歳未満は未経験でも応募可。」というような条件を付すことは問題ないのだろうか。
 ありがちな例だが、実は、このような募集は、違法となる可能性が高い。
 労働施策総合推進法(※)第9条に定める「労働者の募集及び採用について(中略)その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」の趣旨に照らして不適切と言えるからだ。
 ※)旧「雇用対策法」を改正して「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」として施行されている法律;一般に「パワハラ防止法」とも呼ばれる。

 しかし、現実にこのような応募要件を課したい会社も存在するだろう。
 その場合、法に抵触しないようにするためには、次のような求人方法が考えられる。

A:「年齢不問、要業務経験」・「40歳未満、経験不問」の2つの求人に分ける
 応募条件に「業務経験」を課すことは可能である一方、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合は年齢制限を設けることが可能である(労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項第3号イ)ので、この2種類の求人とすれば法に抵触しない。

B:「年齢不問、要業務経験。40歳未満の場合は経験不問」という求人とする
 Aに示した2つの求人を組み合わせて複合的な表現にしたもの。本稿冒頭に記した表現とあまり変わらない印象は否めないが、厚生労働省が公表する『労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A』(https://www.mhlw.go.jp/content/000596959.pdf)では、これを「認められる」としている。

C:求人広告に「30代の未経験者活躍中」と記載する
 会社に関する事実を表示することは(それが事実であるならば)問題ない。ただし、実質的に年齢制限していると求職者に誤解されないよう努める必要がある。

 こうなると、問題は「求人広告にどう表現するか」という話に矮小化しそうだが、こんなことで行政から勧告(従わないと企業名公表)を受けるのもつまらない。
 そもそも、法は、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるべきことを会社に義務づけているのであって、結果として特定の年齢層に偏った採用となることまで禁じられているわけではない。
 であればこそ、求人の段階でのちょっとした注意を怠るべきではないだろう。


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