介護休業は、育児休業と並ぶ雇用継続のための両輪だ。 しかし、本人も会社も予め準備する時間の取れる育児休業と違って介護休業は突発的に発生するためか、手続きが分かりにくく、また、多くの誤解も生じているようだ。
手続きの分かりにくさはともかく、誤解は解いておかなければならないので、ここで整理してみたい。
誤解の最たるものは、介護休業の開始についてだろう。
育児介護休業法第11条に「労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。」とある通り、介護休業を必要とする労働者が申し出るだけで介護休業を取ることができ、それに対する「会社の承認」などといったものは必要ない。
これに関して、会社は、対象家族(「配偶者(いわゆる内縁を含む)」、「父母」、「子」、「同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫」)が要介護状態(傷病・障害により2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)にある事を証明できる書類を提出させることができるが、こういった書類が提出されなかったとしても介護休業の申し出自体が無効となるわけではない点には気を付けたい。
また、介護休業を取得できる従業員は、正社員に限らない。
以下の5要件を満たせば、パートタイマーであれ、アルバイトであれ、対象者となるのだ。
1)日々雇用でないこと
2)介護休業取得予定日から起算して93日+6か月を経過する日までに労働契約期間が満了する(更新されない)ことが明らかでないこと
3)雇い入れ後1年以上を経過していること(※この要件は法改正により令和4年4月1日以降は本則上は撤廃、それ以降は労使協定に定めがある場合に限る)
4)申し出から93日以内に雇用関係が終了しないこと(労使協定に定めがある場合)
5)週の所定労働日数が2日以下でないこと(労使協定に定めがある場合)
そして、「介護休業の終了」は「介護の終了(多くの場合は“お看取り”)」を意味しない。 これも、育児休業とは性格を異にする点と言えよう。
そもそも、介護休業は「介護のために必要な期間」ではなく、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間」と理解するべきであって、その期間中に、必要に応じて対象家族を施設に入れるなり、自宅を改装するなり、また、介護保険の給付等の手続きを進めるなり、そういった時間に充てることが肝要だ。 介護休業は、最大3回に分割して取得できる制度になっているのも、そのためだ。
会社の人事担当者は、平時からこれらを正しく理解し、いざ介護休業が必要になった従業員が発生した時には(まさに突発的に発生するので)、慌てずに制度を運用できるようにしておきたい。
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