「節電の夏」を迎え、7月から8月にかけて、工場などの一斉休業を考えている企業も多いと思うが、そんなときに活用したいのが「年次有給休暇の計画的付与」の制度だ。
年次有給休暇は、労働者の請求した時季(労働基準法では“時季”と表現する)に与えるのが原則だが、労使協定を締結することによって、会社が特定の時季を指定して付与することができるようになる(労働基準法第39条第5項)。
これは「時季変更権」の延長にある考え方で、会社にとっては業務を計画的に配分することができ、また従業員にとっても休暇が消化しやすくなるという、労使双方にメリットがある便利な制度と言える。
しかし、この制度をパートタイマーにそのまま適用するのは、注意を要する。
まず、計画的付与は「年5日を超える日数」が対象となる。すなわち、各人が自由に時季を指定できる日数を年5日間は確保しなければならない。
この点、パートタイマーは元々付与された有休日数が少ないことが多く、年6日以上の有休を付与されていない者は初めから計画的付与が適用されないのだ。
また、そもそも“休暇”というものは「労働義務を免除する」という性格を持つため、所定休日である日を指定することはできない。
特に「企業全体で一斉休業して計画的付与を実施する」という方法を採用した場合、特定のパートタイマーにとってはその日は元々出勤日でない可能性がある。当然ながら、その者は有休を消化しないわけだから、画一的な事務処理では対応できないことに留意しておく必要がある。
それから、有給休暇は文字通り「有給」なのだから、賃金が発生する。
今さら言わずとも当然の話なのだが、月給制の従業員と異なり、時給制の従業員の賃金は“目に見える”ので、このことに驚き、あるいは不快感を示す経営者も少なからずいるので、ここで改めて指摘しておきたい。
なお、パートタイマーに限った話ではないが、採用されたばかりで有休が発生していない者に対して休業を命じた場合は、法定の年次有給休暇とは別の特別有給休暇を付与するか、さもなければ、労働基準法第26条による「休業手当」(平均賃金の6割以上)を支払わなければならない点にも要注意だ。
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